これまで「R」「リブ」「ボス」の順に、樹脂加工側とのルールを説明してきました。そして、最後のルールは、図3に示す「穴」に関する樹脂加工側とのルールです。
そんじゃよぉ、……ここいらから、ちょいとベテランの『域』と『粋』に触れていくぜぃ!
えっ? 僕でもいいんですか? きっと、粋なベテラン設計者になれるのですね?
良君、遠慮は要らねぇ。すでに、エリカちゃんには先週教えたところだ。
……先週!?
設計サバイバル術の小道具としていくつかの「粋」な事例を紹介しましょう。
例えば、樹脂材料のばね特性を生かした「スナップフィット」で、ねじを不要とする部品の締結法を学んでみましょう。
良君! もし、南国の島に遭難しちまったオメェがよぉ、漂流しながらその浜辺にたどり着いたとき、身に着けているものはなんだ?
恐らく、色鮮やかなライフジャケットではないでしょうか?
そのとおりだ、良君! 最近は随分と応答性が良くなったな、あん! どっかのハイブリッド車のブレーキみてぇだ!
それでは、図4に示すライフジャケットのベルトを観察してみましょう。「ワンタッチベルト」と呼ばれる安全ベルトのバックルに注目してください。
これが樹脂部品の締結方法でよく使われる「スナップフィット」で、まさしく、設計サバイバル術としては「小道具」の代表例です。
なるへそ! 図中の『戻り返し』という単語も覚えました。この『スナップフィット』なら、僕のウエストポーチやリュックにも付いていますよ。
そのとおりだ、良君! 次は、ちょいと高度な別の『スナップフィット』にへいるぞ!
図5は、安全性を設計思想の第一優先とする樹脂製おもちゃの電車です。ここから学ぶ高度な「スナップフィット」および、その応用例を見てみましょう。
まず、筆者設計における「従来タイプのおもちゃの電車」から、そのスナップフィットを紹介します。
図5のように、車両ボディ側にスナップフィットを持たせた場合を説明します。例えば、電池交換のときを想定しましょう。
となります。
わしづかみして、スナップフィットをリリースすることの「設計センス」に抵抗がありますが、一度コツを覚えれば、作業はとても簡単です。しかし、ボディを外すとパワーユニットや図示しない電極板が露出することに難があります。また、スナップフィットは、勘合しているときは、鋭利な角が露出しませんが、外すと露出します。安全第一といい切るには、まだ対策の余地がありそうです。
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