樹脂部品の設計ができれば設計者として一人前といえる。一人前の設計者になるためには、やっぱり「断面急変」
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回の冒頭では、『商品の社告やリコールが再び増加しています。しかも、最近の特徴は、企業名が特定していることです』と書きましたが、まるで予言が的中するかのように事故が増加しています。
いつも社告とリコールを出しているのは、自動車メーカーのA社とB社のほぼ2社。家電はC社とD社とE社の3社。OA事務機器はF社。企業によっては、人命をも容易に奪い、何度も繰り返しています!
筆者は設計コンサルタントという職業ゆえ、ある1社を徹底分析しました。
その企業は、事故を未然防止するFMEA手法や、ISO9001で必須のDR(設計審査)システムを複雑化させ、現場の若手技術者に大きな負担を掛けていることに気が付かない管理職が氾濫(はんらん)していました。
技術者のためではなく、管理職のためのFMEAやDRが構築されていたのです。
極め付きは、自分だけが成長すればよい成果主義を技術人事に導入し、この人事システムを疑問視しながらも、惰性で運用していました。その企業では、「出世逃げ」なる言葉が誕生し、部下をまったく育成せず、成果主義を利用して自分だけが昇格する人事システムとなっていたのです。
社告とリコールの再発防止策は、技術ではなく、組織にメスを入れることが肝要です。若手の技術者を、もっともっと大切に、そして、熱意をもって教育していただきたいものです。
べらんめぇ! 出世逃げの成果主義か、直下の部下を育成せず、2階級昇格すれば、関係ない……よくできているなぁ! 感心しちまったぜぃ!
甚さん、それはないでしょ……。図面も読めない英語だけのうちの課長ですけど、来年の4月には部長ですから。いずれは、技術を知らない技術系社長としてデビューすると、先輩がいっていました。
それじゃ、いまの社長は、いったい、何をしているんだ。大企業は知らねぇがよぉ、企業ってぇのは、社長で決まるってェんだよ。
それで、“トップダウン”とか、“強い経営者像”なんでいう言葉が生まれたんですね? そしていま、注目されているには、ユニクロの社長さんですね!
さすが、富士山麓大学の院卒だぁ! ところで、社長の前に“○○社長”というように“○○”が付いてはいかん!
ドッ、どういう意味ですか? 甚さん。興味津々……。
“技術系社長”“外国人社長”“二世社長”“女性社長”……。実力のない社長は、経営の土俵で戦わず、この頭文字の土俵に逃げていく傾向がある。そこで、社長のプライドを誇示するものだ。
なんか、ズシっとくるなあ。当たっているような気がします。ウチの社長とまったく同じです。社長にも偏差値があるんですね。
そうだ! オメェも社長を目指すならよっ、技術を完ぺきに捨てろ! 経営一本で勝負しろ! 技術と経営の兼務は不可能だ! そんじゃ、良君、そろそろ本題にヘィるぞ!
さて、機械系設計者が最初に出くわすのが板金です。板金の主役は、筐体(きょうたい、フレームやシャーシのこと)やカバーです。その代表例が、航空機の機体や、自動車のボディや、自動販売機のボディなどです。
図1は、本連載の対象である「100台/月〜10万台/月」の代表格である家電品や事務機器などの電子機器に関する機械系部品の「加工別コスト分析」と「部品点数分析」です。
どうだ、良君! 図1を見て一気にベテラン設計者となる戦略をいってみやがれ! 本連載のメインテーマだ。
分かりました、甚さん! エーと、一気にベテラン設計者となるには、板金と樹脂(プラスチック)の部品設計を徹底的に学べばいいんですね。特に、いまのご時世を考慮して、コストを左右する樹脂部品の設計を優先します!
やけに、さえているじゃねぇかい! あくまでも、電子機器の場合だがなぁ……。
でも甚さん。僕の通っていた大学では、切削加工ばかりのカリキュラムでしたよ。 板金や樹脂の加工については、ほんの少ししかありませんでした。
だから、いっただろ、専門学校へ行けと。しかし、院卒だからといって、卑下(ひげ)することない。自信を持て! 高卒や高専卒に負けるな! 実務経験がある彼らは手ごわいぞ!
じっ、自信喪失なり……。
若けりゃ、いつでも追いつき、追い越せる。 しんぺェすんな!
この設計サバイバル大特訓を乗り切って、一気に高卒や高専卒の先輩に追いつきたいですね!
ここでようやく気合いの入った良君です。甚さんは、良君を図2に示すイメージで一気にベテラン設計者へと導いていきます。
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