残念なことですが、世の中すべてのものに「良いものと、悪いもの」が存在します。おいしいトマトもあれば、まずいトマトもある。いいレストランがあれば、ダメなレストランがある。製品の良し悪しを決める要因はさまざまです。例えば、携帯電話であれば、人口カバー率や通話品質が携帯電話の良し悪しを決める重要な要因になります。
そして、有限要素にも良し悪しがあります。その要因はズバリ、要素の精度です。
ソリッド要素について見ていきましょう。伝統的に好まれるのが6面体要素です。6面体要素はほかの要素と比べて相対的に精度が高い要素といわれています。一方で、4面体要素は相対的に精度があまり良くないといわれています。これをアタマに入れたまま、話を進めます。
設計者による解析で重要なポイントの1つ、それが有限要素の自動分割です。以前にも説明したとおり、解析作業の中で、有限要素分割は非常に手間と時間のかかる作業です。この作業を短縮することが解析作業を短縮することに直結するわけです。有限要素の自動分割については、さまざまな研究が行われ、そして設計者向けCAEソフトに実装されてきました。
バー要素は、線を刻んでいくようなものですから、自動分割はカンタンです。そしてシェル要素。これも自由曲面の上に整然と要素を分割する方法が確立されていて、十分、実用レベルです。
そしてソリッド要素。ソリッド要素の優等生である6面体要素ですと、自由な形状を自動で分割するのはムリなのです。部品の形状をあらかじめザックリと6面体に分割しておくなどの手動操作が必要になってしまいます。また完全に自動化しようとするなら、あらかじめ4面体に分割しておき、その要素の内部に節点を発生させ、4面体を無理矢理6面体に分割します。そうすると、くさびのようなカタチの悪い6面体要素になってしまったり……。
6面体で任意の空間をキレイに分割する技術は、もう四半世紀にわたっていろいろと研究されていますが、いまだに「これだっ!」という回答にたどり着いていないのです。
「要素にも良し悪しがある」ということを書いていて、大学時代の劣等生の自分を思い出しました。僕は大学のときに、必修科目である材料力学の単位を落として、再履修しました。以前の材料力学の連載は、このときの経験をバネに(?)して、自分なりに理解した知識をイラスト化してまとめた授業ノートをベースに執筆したものでした。そういう意味では、完全に落ちこぼれ目線での解説だったワケです。でも、「何とか材料力学を分かってもらいたい!」という気持ちは優等生にも負けないつもりです。そんな僕の書く連載を紹介してくれたり、MONOistゼミナールの内容について紹介してくれたりしている優等生的なサイトがあります。
どちらのサイトもJIKOさんが運営していますが、材料力学の講座あり、JIKOさんが開発したCAEソフトウェア(フリー)のダウンロードあり、と情報満載の優良サイトです。この連載よりもより詳しく踏み込んで解説しています。JIKOさんは優等生ですが、「CAEを世の中に広めたい」という気持ちは劣等生の僕も一緒です。この連載のステップアップとして最適なサイトですよ。ぜひご覧になってみてください。
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さて今回は座標系と自由度、そして要素の次数について説明しました。
特に座標系と自由度は、今後、拘束条件や荷重条件で大切になってきますので、概念とともにアタマに入れておいてください。今回の内容をカンタンにまとめると以下のようになります。
次回は要素の精度について、実例を挙げながら、もう少し詳しく解説していきます。(次回に続く)
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