解析精度を高めるため設計者自身でコントロールできる唯一のパラメータは、メッシュサイズだ。
連載「設計者CAEを始める前にシッカリ学ぶ有限要素法」の第6回では「解析の品質」について解説していきます。
前回は三大有限要素以外の要素、剛体要素と質量要素について説明しました。三大有限要素、剛体要素、質量要素があれば、かなり正確にモデル化できると思います。特に質量要素は振動解析を行う場合は考慮すべき重要な要素です。
そして四面体1次要素はデンジャラスであることも……四面体1次要素をワルモノにしてしまったみたいで、心が痛みます。今回は四面体1要素君のためにも、少しだけ弁解させてください。
四面体1次要素は悪いことばかりではないのです。メッシュサイズさえ適切であれば、それなりの答えを出せます。相対的な評価に限られますが、応力の分布をチェックしたり、解析モデルが正しいかどうか確かめるための予備的な解析にも使ったりすることが可能です。また相対的な評価だけでなく、メッシュサイズさえ正しく設定すれば、変位で95%、応力で90%程度の理論解との一致まで持っていけます。 そのうえ、ほとんどの解析アプリケーションが対応していて、相対的に節点数が少ないという利点もあります。
だから四面体1次要素はデンジャラスだと避けるのではなく、その特徴を理解して用途に合わせて使うことが重要だということです。
さて、今回は「解析の品質」について説明していきましょう。 「解析の品質」は「解析の精度」といってもいいでしょう。この精度という概念が解析にはついて回ります。解析といえば、とにかく精度。この解析の精度に一番大切なもの。それは何だと思いますか? それは「要素」なんです。有限「要素」法なんだから、当たり前といえば当たり前ですよね。
最近の3次元CADに組み込まれている、または連動している設計者向けの解析ソフトは特定の操作をしなければメッシュを見られないものがあります。メッシュが見られないということは、有限要素の「顔」が見えないということです。僕にはそれがとっても不安に思えてなりません。有限要素解析で一番大切なものが、見えないのです。これってマズイと思いませんか?
有限要素をチェックするために必要なポイントは次の4つと思っていいでしょう。
まず「要素の形状」。これは要素そのものの形状です。四角形とか、四面体とかありますが、“正”四角形、“正”四面体に近い要素ほど「精度のいい要素」ということになります。これはシェル要素でもソリッド要素でも同じことです。特に中間節点がある場合、要素の形状の変わり度合いに自由度が出てきますので、注意が必要です。
ここでは見た感じが大切です。「要素の形状が見た感じ、キレイであればあるほど、精度がよい」という程度に理解しておいてください。
次のチェックポイントは「メッシュパターン」です。これはメッシュそのもののキレイさ、ということです。メッシュラインがジグザグになっているよりは、「碁盤の目」のように整然としている方が、精度がよいと思ってください。
3つ目のチェックポイントは「形状の近似度合」です。どれほど形状を正確に表現できているか。それが形状の近似度合です。以下の図は、「5円玉の4分の1の部分」だと考えてください。左図であれば、五円玉の形状がカンタンに想像できますが、右図となると何が何だか分かりません。元の形状が表現できていればいるほど、精度がよいと思ってください。
さて、4つ目のポイント。それは「要素の密度」です。一般的には要素の密度が高ければ高いほど、解析の精度はよくなります。要素の密度が高い、ということは、要素のサイズが小さいということになります。
非常に荒っぽい表現になってしまいますが、以下のように覚えておくといいでしょう。
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