CAE解析とExcelを使いながら冷却系の設計を“自分でやってみる/できるようになる”ことを目指す連載。連載第4回は、ヒートシンクの設計計算Excelシートを使ってヒートシンクを設計する。また、設計したヒートシンクのCAE解析の結果と、紙と鉛筆による結果とを比較してみる。
今回は“ヒートシンクの設計計算Excelシート”を使って、ヒートシンクを設計します。そして、設計したヒートシンクのCAE解析を行い、紙と鉛筆による結果とシミュレーション結果を比較してみます。なお、紙と鉛筆による結果とは、設計計算Excelシートによる計算結果のことです。
図1に今回の設計モチーフであるヒートシンクを示します。現在の関心事は接触面の熱抵抗です。
熱抵抗Rは次式でした(式1)。
では、熱抵抗Rを求めるExcelシートを作りましょう。固体の表面粗さは6.3[μm]としましょう。機械製図をしているとよく見掛ける数字ですね。hはその2倍、hcはhと同じ値とします。固体の材質はアルミの引き抜き材なので6000番台として熱伝導率は237[W/m.K]、ブリネル硬さはHB W 10/500で95です。ブリネル硬さの単位が問題です。JIS規格(参考文献[1])を見ると、ブリネル硬さの単位は[kgf/mm2]のようです。これを[Pa]に変換します。空気の熱伝導率は80[degC]くらいとして0.03[W/m/K]にしました。定数Cは1[-]です。
表1にExcelシートを示します。青色のセルに注目してください。接触熱抵抗の逆数は1万2629[W/m2.K]となりました。アルミの接触熱抵抗をいくつか調べましたが、なかなかいい線いっています。
自作PCの組み立てではCPUとヒートシンクの間に熱伝導グリスを塗布します。熱伝導グリスの効果を見積もりましょう。入手可能なグリスの熱伝導率は2[W/m.K]くらいです。空気の熱伝導率の代わりに熱伝導グリスの熱伝導率を代入すると、表1の緑色のセルに示すように接触熱抵抗の逆数は16万8777[W/m2.K]となりました。かなりの改善です。
表1の緑色のセルの「接触抵抗の逆数 第1項」と「接触抵抗の逆数 第2項」に注目します。式1の第1項と第2項です。第2項の方が圧倒的に大きく、第1項を無視することができますね。表1の黄色のセルは真実接触面積A1をゼロとしたものです。接触熱抵抗の逆数は15万8730[W/m2.K]と先ほどの値とほとんど変わりません。
接触熱抵抗の計算には、なかなか決められないパラメーターがあります。hcとCは実験でしか求まりません。式1の第2項には、このhcとCが入っておりません。熱伝導グリスを使った場合は、hcとCのような不確定要素を除去できます。つまり、式1の第2項のλairを熱伝導グリスの値とすれば、第1項を無視して第2項だけの計算で事が足ります。
熱伝導グリスが使えない場合もあると思うので、熱伝導グリスなしで検討を進めましょう。
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