ヒートシンクを設計してCAE解析をしよう!CAE解析とExcelを使いながら冷却系設計を自分でやってみる(4)(3/4 ページ)

» 2025年03月24日 06時00分 公開

ヒートシンクのCAE解析

 いよいよCAE解析です。図5に境界条件を示します。まず、発生熱として「内部熱」を1[W]とします。そして、伝熱界面の熱伝達率を5[W/m2.K]、周囲温度を20[degC]にしています。

境界条件 図5 境界条件[クリックで拡大]

 固体間には、接触要素を配置します。図6に接触要素を示します。ここでは接触抵抗の逆数を入力します。接触抵抗の逆数の適切な言葉がなかったのでしょうか、ソフトは「熱伝達率」と表示しています。ここでは500[W/m2.K]と入力しました。小さな値にしないと温度差が発生せず、温度分布の見栄えがよくないのでこうしました。

接触要素の条件 図6 接触要素の条件[クリックで拡大]

 図7に温度分布の解析結果を示します。最高温度を表2の発熱体最高温度Tcと比較すると、ほぼ一致しました。前回の解説の中で、ヒートシンクを付けた場合、ひだひだがあるので図3のLs寸法が少し曖昧になり、「この件は後回しにする」と述べましたが、アルミの熱伝導率が他のものよりはるかに大きいので、ヒートシンク内の温度差がなくなっています。ひだひだ分の長さは考慮しなくてよいように思えます。

解析結果:温度分布 図7 解析結果:温度分布[クリックで拡大]

 図8に熱流束分布を示します。表2の固体内熱流束qsと比較すると、ほぼ一致しました。ひだひだの下の方の熱流束が大きいですね。ひだひだの断面が台形のものを見たことがあります。熱流束の分布を一様にする効果があり、理にかなっていると思います。

解析結果:熱流束分布 図8 解析結果:熱流束分布[クリックで拡大]

 温度分布について、紙と鉛筆による方法とCAE解析による方法を詳しく比較しましょう。図9に示した温度評価位置について、CAE解析結果をテキストファイルで出力し、グラフにしました。これを図10に示します。両者の一致は「いい線いってる」で終わらそうとしましたが、もう少し細かく見てみましょう。

温度評価位置 図9 温度評価位置[クリックで拡大]
温度分布の比較 図10 温度分布の比較[クリックで拡大]

 紙と鉛筆による温度分布と、CAE解析による温度分布を重ねたものを図11に示します。発熱体内部の温度が少し異なっています。片方がオフセットしているように思えるので、接触要素での熱抵抗による温度差が原因のようです。紙と鉛筆による熱流束は2632[W/m2]、CAE解析による熱流束は図8に示したように2644[W/m2]と0.5[%]しか異なりません。ではCAE解析の固体同士の接触部の温度差は図12に示すように、ΔT=68.49−66.273=2.2[degC]です。

温度分布の比較 図11 温度分布の比較[クリックで拡大]
固体接触部の温度分布 図12 固体接触部の温度分布[クリックで拡大]

 一方、紙と鉛筆による温度差は熱抵抗の定義から次式です(式2)。このΔTに違いが出たようです。式2の結果は、熱抵抗の定義に従った温度差なので間違う余地はないように思えます。

式2 式2

 「そういう細かいこと言うなよな〜」と勤めていたときに言われたことがありますが、筆者はこういうことが好きなのです。

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