解析にはプロセスがあります。手動で、あるいは自動でこのプロセスが処理されていきます。ここでは一般的な解析の手順を説明します(図3)。
最初に必要なのが、解析すべき部品の形状情報です。最近では3次元CADで作成されたモデルが利用されることが多いです。作成した3次元の設計モデルをシームレスに解析に使うことができることは、3次元設計の大きな魅力となっています。もちろん3次元CADとそのデータがないと解析ができないわけではありません。2次元図面などの形状情報があれば解析はできます。
このフェーズで大切なことは、部品の形状はもちろんですが、その部品が置かれようとしている環境を十分に観察することです。
「設置される環境の温度はどれくらいか」「ボルトで固定されているのか」「はたまた接着剤なのか」「荷重はどう掛かっているのか」「面で押されてるのか」「殴るような荷重なのか」「そぉ〜っと力が掛かるのか」……などなどです。そういうことが分からないと、解析のためのモデルの作成と設定が仮定と想像になり、ひいては解析結果の精度に影響します。
とにかく解析しようとする部品とその周りの環境を観察したり、的確に想像したりすることが大切です。さらに材料定数を特定します。もちろん使用する材料によって材料定数は異なります。
このフェーズが解析プロセスの中で一番難しい部分であり、自動化が困難な部分であり、また有限要素法を理解しているか、いないかで設定に差が出る部分です。具体的な手順は以下のようになります。
まず、有限要素法というその名のとおり、解析対象となる部品や領域をある規則で細分化します。この分割にも、分割要素の大きさ、ゆがみ具合などについてコツがあります。僕が解析を始めたころは、この分割はすべて手作業でした。最近では3次元CADのデータをベースに自動的に分割することができるようになりました。3次元CADがそのメリットを遺憾なく発揮する部分です。
そしてその部品にどういう力がどのように掛かっているのか、その部品がどのように設置固定されているのかを指定します。繰り返しになりますが、このフェーズでの判断で解析の結果が正しいものであるか、そうでないのか決定されてしまいます。非常に重要なフェーズとなります。このフェーズで、解析の出力結果としてどういう情報が欲しいか指定する必要があります。変形、応力、ひずみなどの情報です。解析の種類によっては、温度や周波数を指定する場合があります。
ここまでで解析のための入力データの準備が整いました。解析の種類に応じたデータがセットアップされているわけです。
そこで解析のスタートです。このフェーズではただただ解析が終わるのを待つのみ……。
解析の結果を評価するフェーズです。ここでモノをいうのが材料力学の知識です。ハッキリいって、材料力学の知識がないと解析結果を間違えて解釈してしまう可能性が大です。
また有限要素法特有のクセもあります。解析結果が本来の現象を正しく表したものなのか、有限要素法のクセなのか、判断する必要もあります。有限要素法の基本原理を理解していないと、解析結果に潜む有限要素法のクセを見抜けません。そのためにも有限要素法の仕組みを理解しておくことが重要なのです。
解析した結果を設計に反映します。
「もっと重量を減らして同じ強度を確保できないか?」
「いまと同じ重量でさらに高い強度を確保できないか?」
あくまで解析結果が正しいと仮定すれば、実験を行うことなく設計はブラッシュアップできるワケです。
軽量化のために穴を開けるにしても、穴を開ける位置によって部品の強度がどう変わるのか検討することができます。強度確保のためにリブを立てるにしても、リブを立てる位置によって部品の強度がどう変わるのか検討することができます。解析の結果を設計にフィードバックさせることによって設計をよりスマートなものに変えていくことができるのです。
以上が大まかな解析作業の流れです。
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今回の連載では、この流れについて説明しながら有限要素法の仕組みを理解しながら、解析のコツや勘所をできるだけ解説していきたいと思います。
今回も話が長くなってしまいました。次回は有限要素そのものについて解説したいと思います。(次回に続く)
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