TOCは工場の生産性を改善するだけの手法にとどまらない。相反するニーズの板挟みに悩まされる組織の「ジレンマ」を解消し問題解決を目指す体系的なアプローチ「TOC思考プロセス」を紹介しよう。
前回「ジレンマを解くツールの使い方を詳細に学ぼう」のジレンマを打ち破るアイデアを考える場面で想定された皆さんの反応、「それができれば苦労しないよ」について、今回は具体的に考えてみましょう。
前回示された解決の糸口は、
「やみくもに売らなくとも(D')、機会損失しない売り方(B)」がないか?
でした。
本連載は思考プロセスの考え方を紹介するのが目的ですから、この解決策を一から検討することは差し控え、代わりに「ショートカット」を使います。解決策は、筆者の連載記事「利益創出! TOCの基本を学ぶ(6)−じゃあTOCでどれだけ利益が出るの?」を見ていただくとして、「解決策:TOCソリューションを活用して、顧客の困りごとを解決し、顧客利益を創出する提案をしている」としましょう(図1)。
「えっ、読んだけど……そんな簡単にできれば苦労しない」ですって? 困りましたね、何でそんなに非現実的な話に思えるのでしょうか。
解決策が非現実的に思える場合、必要に応じて具体化する必要があります。では、なぜ非現実的だと思うのでしょうか。実は解決策が非現実的と思うのは、以下の3つのいずれかを感じてしまうからなのです。
素晴らしいウィン・ウィンのアイデアは、時として実現不可能のレッテルを張られお蔵入りになることがあります。実行に当たって多くの障害や実行後の副作用が心配になり、そうなるとまず人間は「実現不可能」と思ってしまうことがよくあるのです。ですからなおさら、アイデアを実行するに当たっての障害と実行した後に起こる副作用を切り分けて考え、それぞれに十分な対策を立案しておくことが重要なのです(図2)。
解決策の「メリット」「障害」「副作用」を列挙し、それを考えながら解決策を具体化していきます。障害と副作用に対してはこの後のステップで対策を講じますから、ここでは解決策のメリットを十分に検討し、どれくらい良いことがあるかをメインに考えます。
まず質問です。解決策が実現できたらどれだけ「良いこと」が考えられますか。
人間は常に新しいものを求める本能があります。しかしそれと同時に痛みを伴う「好ましくないと思える」変化には激しく抵抗する生き物でもあります。
TOCではさまざまな「変化」を実現するために、「変化に抵抗する原因」が何かを見極め、抵抗を力ずくで排除することなく、納得ずくで「変化」を現実のものとするのです。人間が変化に対して抵抗する6つの段階(Six layers of Resistance)は以下のとおりです。
この抵抗の6つの段階を克服して「良いこと」を実現していくためには、以下の合意形成の6つのステップを作っていけばよいのです。
次に、未来ツリーを使った具体的な手順を紹介していきましょう。
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