さらに現状ツリーをガイドラインに、解決策(インジェクション)を起点にして、それぞれの好ましいこと(DE)を因果関係で結んでいきます。では、解決策とつながった「好ましいこと(DE):3. 高い単価で受注できている」について考えてみましょう。
もしも「好ましいこと(DE):3. 高い単価で受注できている」ならば、どんな結果が発生するか考えてみてください。当然「利益率が高い」ことが予想されます(図4)。
「好ましいこと(DE):3. 高い単価で受注できている」からは、さらに別の結果が生じないか考えてみましょう。現状ツリーから考えると「6. 値引き受注がない」「8. 顧客の真の納期で納めている」という結果が生じそうだと分かります(図5)。
好ましいこと(DE)がすべて成り立つためには、追加の解決策(インジェクション)の注入をしなければならないことが普通です。どんな追加の解決策が必要でしょうか。以下は質問の例です。
質問: 「顧客の真の納期で納めている」状態を実現するには、「解決策:TOCソリューションを活用して、顧客の困りごとを解決し、顧客利益を創出する提案をしている」のほかに、何が必要だと思いますか?
もし「解決策2:TOC−DBRで工場が小ロット短納期で生産できている」かつ「解決策:TOCソリューションを活用して、顧客の困りごとを解決し、顧客利益を創出する提案をしている」のであれば、「8. 顧客の真の納期で納めている」ことにならないでしょうか。では次の質問です。
質問: 「もしそうなると、その結果何が起きますか」
もし「8. 顧客の真の納期で納めている」のであれば「出荷が平準化している」という結果が導かれることが分かります(図6)。
未来ツリーでは、いくつかの解決策(インジェクション)を注入して好ましいこと(DE)を実現します。より確実に好ましいこと(DE)を実現させるためには、時間経過とともに小さな改善が蓄積されることが必要で、そのために好循環(プラス)のループを作ります。
図9の完成した未来ツリーを見てください。全部で3つの好循環(プラス)のループが確認できるでしょうか。こういった好循環を作り込むことによって、解決策をより確実に好ましいこと(DE)につなげられるのです。
解決策(インジェクション)を実現することで、副作用(ネガティブな枝)が生じないかどうか確認します。未来ツリーは素晴らしい未来を確認するツールですが、「好事魔多し」の例えどおり、好ましいこと(DE)の裏には副作用が隠れていることがよくあります。そこで因果の考え方を活用して、副作用が生じないか慎重に検討します。もし副作用がありそうならば、新たな解決策(ネガティブ・ブランチ・インジェクション)を追加して取り除きます。
ネガティブな枝の確認は、まず未来ツリーを見て副作用が起きないか考えます。
質問: 「よい」と思った好ましいことか、何かほかのことが引き起こされない?
よく考えてみると、追加した「解決策2:TOC−DBRで工場が小ロット短納期で生産できている」からDBRを導入すると、よくある事例として「非ネック工程の見かけの生産性は悪化する」ことで、現在の評価軸「各工程は生産性指標で評価される」から、「非ネック工程の評価が悪化する」、結果として「非ネック工程のオペレーターが納得しない」、結果として「DBRの仕組みが崩れる」ことが心配されます(図7)。何か良いアイデアはありませんか。
そこで「マイナスの枝への解決策」として「非ネック工程の評価を生産性からスピードに変える」と考え、解決策を追加してみました。そうすると、「非ネック工程の生産性低下は問題ない」、その結果「非ネック工程の評価は悪化しない」と予想され、「ますますDBRの仕組みが強固になる」というプラスの結果が生まれました(図8)。
好循環を読むときには「ますます」や「さらに」という形容詞を追加すると、その効用が実感できますので必要に応じて追加して読んでみてください。
最後にもう一度下から上に因果関係を確認し、抜けがないかどうか、因果関係が不十分なところがないかどうかなどを確認します。当然ですが、読み合わせは声を出して目と口と耳を総動員して、自分の直感と対話します(図9)。
さて、未来ツリーの読み合わせは終わりましたか。すべての「問題」が「好ましいこと(DE)」に変わったでしょうか。全体的に好ましいと感じますか、自分の直感からOKが得られれば次のステップに進みます。
未来ツリーは「解決策を実現できければ、これだけ良いことがあるよ」と証明するツールです。ちなみに私たちは未来ツリーを「ウハウハマップ」と呼んでいます。解決策を実現した暁には「これだけ良いことが起きるよ」を実感し、インセンティブを高めていくのです。これまでのステップで、解決策への合意はステップ1から4までは確認できたはずです。でも……本当にうまくいくんでしょうか。
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次回は総仕上げということで、実行を阻む「障害」を除去する方法と、確実な実行計画を考えていきましょう。
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