未来ツリーは解決策(インジェクション)(注1)を実現したら、未来がどう好ましく変化するかをシミュレートするための道具です。現状ツリーで挙げられた好ましくない結果(問題)が副作用を起こすことなく、好ましいこと(DE:Desirable Effect)に変わることを確認します。ジレンマの雲から得られた解決策を開始点として、好ましいこと(DE)を実現していくためには、場合によっては中核問題に対する解決策だけではなく複数の解決策を実現する必要があります。
ツリーの作り方自体は、現状ツリーと未来ツリーはまったく同じです。唯一違うのは未来ツリーはまだ実現していないこと、すなわち現状を変えたら、未来がどう変わるかをシミュレートするツールであり、解決策を実現できたらどれだけ素晴らしい明日が実現できるかを実感するためのものです。
注1:解決策(インジェクション) 解決策のことを思考プロセスではInjection(注射)と表現します。まさに病気のときに注射を打つと病状が劇的に改善するイメージです。
作成のステップは、以下のとおりです。
下から上に読んでいき、因果関係を確認する
思い出してください。ここでは第3回で抽出した問題が、どのような状態になれば「好ましい」のかをリスト・アップします(表1)。
好ましくない現実(UDE)の一覧 | 好ましいこと(DE)の一覧 | |
---|---|---|
1. | 納期遅れが多発している | 納期順守率が高い |
2. | 売り上げが上がらない | 売り上げが上がっている |
3. | さらに値引きを要求されている | 高い単価で受注できている |
4. | 欠品が増えている | 欠品が少ない |
5. | 利益が減っている | 利益が激増している |
6. | 売れそうな顧客に値引き攻勢を掛けている | 値引き受注がない |
7. | 機会損失が多発している | 機会損失がない |
8. | 納期が月末に集中している | 顧客の真の納期で納めている |
9. | 過剰在庫が増えている | 過剰在庫がない |
表1 好ましくない現実(UDE)から好ましいこと(DE)に変換する |
ここからは病気の治療とはちょっと違います。病気の治療は「症状」が消えてなくなれば快復ですが、問題解決の場合は問題がどう変わればよいか、変わった状態を定義してやる必要があります。基本的に好ましいこと(DE)とは基本的に問題と反対の状態ですが、もしも反対の状態が具体的でないと感じるならば、次のようにいい換えてみてください。
例えば「自分の将来に自信が持てない」を真逆に否定すると、「自分の将来に自信が持てないことはない」となります。次に「自信が持てないことはない」ならば、どのような状態が存在するか考えてみます。そして「自分の将来を自信を持って語る」というふうに、表現するのです。
箱同士のつなぎ方は、現状ツリーと同様、因果関係でつないでいきます。解決策から近い好ましいこと(DE)を1つ選び矢印で結びます。因果関係が遠いと感じるようであれば間に新たな箱(ボックス)を入れて論理性を検証します。最初の好ましいこと(DE)がつながったら、次に近い好ましいこと(DE)を選び、同様につないでいきます。この過程で、ある好ましいこと(DE)を実現するために、新たな解決策が必要であれば、それを追加してつないでいきます。
これを繰り返し、解決策とすべての好ましいこと(DE)がつながっていること、解決策が実現された暁にはすべての問題が好ましいこと(DE)に変わることを確認します。未来ツリーは現状ツリーと似た形になるので、現状ツリーを参考にしながらつなぐと効率的に作成を進められます。また、現状ツリー作成時と同様、あらかじめ好ましいこと(DE)同士の大まかな因果関係を確認しておくことも効果的です。
今回の解決策は「TOCソリューションを活用して、顧客の困りごとを解決し、顧客利益を創出する提案をしている」でした。この解決策(インジェクション)を下方に配置します。先に抽出した表1の好ましいこと(DE)の中から、直感的に解決策と因果関係のありそうなものを選び出し配置します。
どの「好ましいこと」の箱が一番近いでしょうか、現状ツリーを参考に考えてみましょう。すると「3. 高い単価で受注できている」は、現状ツリーからも因果関係がありそうなことが分かります(図3)。
声を出して読み上げてみます。
もし
「解決策:TOCソリューションを活用して、顧客の困りごとを解決し、顧客利益を創出する提案をしている」
ならば
「好ましいこと(DE):3. 高い単価で受注できている」
どうでしょうか。因果的にはよさそうですね。
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