今回は、トランジスタの増幅作用により「音声信号を増幅する回路」の電圧増幅率を求める方法について解説します
【問題17】のような増幅回路において、入力信号は何倍に増幅されるか? 電圧増幅率AVを求めなさい、という問題でした 。
皆さん解けましたか?
解けた方も解けなかった方も答え合わせをして、次項の解説までぜひ読んでみてください。毎週コツコツ問題を解いて、電気・電子回路の基礎知識を身に付けてください。
それでは、解答を発表します!
【問題17】はトランジスタの増幅作用により、「音声信号を増幅する回路」の電圧増幅率を求める問題です。
【問題17】のトランジスタ増幅回路は“エミッタ共通回路”です。エミッタ共通回路では、信号入力にベース、信号出力にコレクタを使います。しかし、直接ベースに音声信号を入力することはできません。なぜなら、ベース−エミッタ間電圧VBEが0.6から0.7Vを超えないとベース電流IBが流れないからです。
参考解説:VBE−IB特性について | |
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⇒ | 【問題15】 マイコンでモータをON/OFFする−【問題14】の解説より |
そこで、【問題17】のトランジスタ増幅回路では「入力信号(交流)に直流電流・電圧を加えたものをベースに入力し信号を増幅させる」いわゆる“バイアス方式”により信号を増幅しています。
それでは、図1をご覧ください。
【問題17】のトランジスタ増幅回路では、抵抗RBを通じ電源VCCからベース電流IBを供給してトランジスタをバイアスしています。このようなトランジスタ増幅回路を“固定バイアス回路”と呼びます。
図1において、コンデンサCIとCOを“結合コンデンサ”と呼びます。コンデンサは交流電流のみを流す作用があるため、CIによりバイアス電流IBは入力端子に流れ出ません。またCOで直流分がカットされるので、出力端子には交流分の電流だけが表れます。
このように、トランジスタ増幅回路の各部の電流・電圧には直流分と交流分があるため、その表記に工夫が必要です。
ここで直流分と交流分を区別するために、
と表すことにしましょう。
この表記に従い、固定バイアス回路の各部の電流・電圧を以下に示します(図2)。
図2において、固定バイアス回路の動作は次の3つの式で理解できます。
(1)入力電流について、ベースに流れる電流ib+IB
(2)電流増幅について、コレクタに流れる電流ic+IC
(3)出力電圧について、コレクタ−エミッタ間電圧vo+VCE
バイアスは回路の直流分を意味します。
固定バイアス回路では、「出力の振幅を最大にするために、VCEをVCC/2にする」ようにトランジスタをバイアスします。ここで、【問題17】のバイアス抵抗RBを調べてみましょう。
コレクタ電流ICは、
となります。
そして、ベース電流IBは、
となり、バイアスとしてベース電流を30μAとしたとき、最大振幅が得られることが分かります。
そのための抵抗RBは、
となり、【問題17】ではRBを360kΩに設定しています。
それでは【問題17】を解いてみましょう。ここでは回路の交流分を考えます。
まず、ベース電流ibは、
となります。
次に、コレクタ電流icは、
となります。
そして、voは、
となります。
では、電圧増幅率AVはというと、
となり、エネルギーとしては「66倍」、そして負の数値であることから波形が反転(プラスとマイナスが逆転)することが分かります。
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