今回の宿題は、トランジスタ増幅回路をIC化して1つのチップに収めたアナログ素子「オペアンプ」に関する問題です
【問題18】のような増幅回路において、入力信号は何倍に増幅されるか? 電圧増幅率AVを求めなさい、という問題でした。
皆さん解けましたか?
解けた方も解けなかった方も答え合わせをして、次項の解説までぜひ読んでみてください。毎週コツコツ問題を解いて、電気・電子回路の基礎知識を身に付けてください。
それでは、解答を発表します!
【問題17】と【問題18】は、基本的なトランジスタ増幅回路の問題です。
最初に、【問題17】と【問題18】の回路を比べてみましょう。
図1(a)は「固定バイアス回路」と呼ばれ、トランジスタと2つの抵抗から構成される最も基本的なトランジスタ増幅回路です。それに対し、図1(b)ではエミッタ抵抗REが付加された構成になっています。
図1(b)で、REはバイアスを安定化させる働きをします。
トランジスタの電流増幅率hFEはトランジスタによってバラツキがあります。また、hFEは温度変化に敏感で、温度が上昇するとhFEも増大してしまいます。
ここで、図1(b)のトランジスタ増幅回路のバイアス(図1(b)の青線)をたどると、
が成り立ちます。
エミッタ電流IEは、
となり、コレクタ電流ICとほぼ等しく、よってIBは、
と求められます。
結果、図1(b)のトランジスタ増幅回路では、hFEが増加するとIBが減少し、そしてIC、IEも減少することになります。
このような効果を“負帰還”といい、このバイアス回路を“電流帰還バイアス回路”と呼びます。
それでは、【問題18】を解いてみましょう。
【問題18】は、電流帰還バイアス回路の電流増幅率AVを求める問題です。
図2に、電流帰還バイアス回路の各部の電流・電圧を示します。
ここでは回路の交流分を考えます。
入力信号電圧viは、
となります。
そして、出力信号電圧voは、
となります。
よって、電圧増幅率AVは、
となります。
上記の式より、トランジスタの入力抵抗hieは、hie≪hfe・REであるため、
となり、「3倍」の反転増幅が求められます。
電流帰還バイアス回路では、交流成分にも負帰還が掛かるため、大きい電圧増幅率を得ることはできません。そこで、図3のようにREと並列にCEを付加します。コンデンサは交流電流のみを流す作用があるので、実効的にREを低下させ電圧増幅率を大きくすることができます。このような働きをするコンデンサを、“バイパスコンデンサ”と呼びます。
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