水上走行もできる4人乗り超小型EVをベンチャーが開発、水害の多いタイで販売:電気自動車
電気自動車(EV)ベンチャーのFOMMは、前輪2輪にインホイールモーターを搭載する4人乗りの超小型EV「FOMMコンセプトOne」を開発した。2014年3月にタイで開催される「第35回バンコク国際モーターショー」に出展し、2015年10月からタイ市場での販売を目指す。水害の多いタイ市場向けにジェット水流発生装置で水面を移動できる機能も搭載している。
電気自動車(EV)ベンチャーのFOMMは2014年2月20日、前輪2輪にインホイールモーターを搭載する4人乗りの超小型EV「FOMMコンセプトOne」を開発したと発表した。同社に出資する大同工業と日本特殊陶業をはじめ、国内自動車部品メーカー26社との共同開発となっている。タイ・バンコクで開催される「第35回バンコク国際モーターショー」(2014年3月26日〜4月6日)に出展する予定。現在、タイ国内での製造/販売に向けた交渉を進めており、2015年10月からタイ市場での販売を目指す。価格は100万円未満を想定しており、初年度販売目標台数は5000台である。
小型サイズで4人乗りを実現するための工夫
FOMMコンセプトOneは、外形寸法が全長2495×全幅1295×全高1550mm、車両重量が460kgと、小型かつ軽量のEVである。車両デザインは、慶応義塾大学教授の清水浩氏が開発した8輪のインホイールモーターEV「エリーカ」なども手掛けたミニモ代表取締役の江本聞夫氏が担当した。
最大の特徴は、道路交通法で定められている1人乗りのミニカー(全長2395×全幅1095×全高1500mm)を少し上回るサイズでありながら4人乗りを実現したことだ。国土交通省が推進し、自動車メーカーが実証実験を行っている2人乗りの超小型EVと比べてもほぼ同等サイズである。例えば、日産自動車の「New Mobility CONCEPT」は全長2340×全幅1230×全高1450mm、ホンダの「MC-β」は全長2495×全幅1280×全高1545mm、トヨタ車体の2人乗り「コムス」は全長2395×全幅1145×全高1575mmとなっている。
この小型サイズで4人乗りを実現するためにさまざまな工夫が取り入れられている。まず走行用モーターは、車体内部で場所を取らないインホイールモーターを採用した。最高出力5kW/最大トルク280Nmのインホイールモーターを、前輪の2輪それぞれに組み込んでいる。インホイールモーターの開発は、シンフォニアテクノロジーと共同で行った。
運転席の操作系は、一般的な四輪車のステアリング+アクセル/ブレーキペダルではなく、二輪車と同じバーハンドル+アクセルスロットル/ブレーキレバーを用いている。FOMM代表の鶴巻日出夫氏は、「全幅が1295mmと狭い中でアクセルペダルを設置すると、前輪のタイヤハウスとの干渉を避けるために、運転席を車両の後方に配置しなければならなくなる。こうなると、2395mmという短い全長の中で、後席に2人乗車するスペースがなくなってしまう。バーハンドルによる操作系は、この課題を解決するために採用した」と説明する。
走行用モーターを動作させる電力を蓄積していくリチウムイオン電池パックは、カセット交換式を採用した。2個の電池セルを直列接続したものをカセット1個分とし、最大3個のカセットを搭載できる。その際の走行距離は約100km(市街地走行モード)である。電力消費は、カセット1個ずつ消費していくので、空になったカセットだけを取り出して住宅内で充電することができる。充電済みカセットを非常用電力としても使用可能だ。カセットを取り出さずに、車両の充電ポートに家庭用電源を接続して充電する機能も備えている。
タイの気候を意識した機能も
この他、販売を予定しているタイの気候を意識した機能も用意している。蓄熱式簡易クーラーは、蓄熱魔法瓶内の冷媒を電力で冷却し、走行時にその冷媒から冷気をスポット的にドライバーへと当てるオプションの空調システムだ。電気自動車の走行距離が短くなる最大の要因として空調に使う電力が挙げられるが、年間の平均気温が28℃のタイでは冷房が必要であり、蓄熱式簡易クーラーであれば少ない消費電力で冷房が可能になる。
2011年夏の例を出すまでもなく、タイは水害が多く発生する。FOMMコンセプトOneは、インホイールモーターや車両下部を防水機構にすることで耐水性を高めているが、さらに水害によって水に流されても水面を移動できるように、ジェット水流発生装置も装備している。これは、前輪のホイールに作り込んだスクリュー形状からの水流を導水板によって車両後方に放出することで推進力を得るものだ。ただし、あくまで緊急用の機能であり、水上での移動能力には制限があるという。
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