AIエージェントがCAEを動かすとどうなる? 人に残る役割は?CAEユニバーシティ 特別公開フォーラム 2026レポート(1/3 ページ)

AIエージェントがCAEツールを操作し、解析作業を担うようになれば、人の役割はどう変わるのか。「CAEユニバーシティ 特別公開フォーラム 2026」で行われたサイバネットシステムの講演では、AIエージェントによるCAE解析の実験を通じて、AIに任せられることと人に残る仕事、CAE教育の在り方が紹介された。

» 2026年08月26日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 サイバネットシステムは2026年7月30日、「CAEユニバーシティ 特別公開フォーラム 2026」を開催した。その中で、同社 技術開発本部 デジタルエンジニアリング第2統括部 モデリング&データサイエンス部 技術第4課 シニアスペシャリストの宮堂泰寛氏は、「つまずきから学ぶCAE教育のコツ 2.0 〜AIエージェントに任せること、人に残ること〜」と題して講演を行った。

 宮堂氏は、AI(人工知能)エージェントにCAEツールを操作させる実験を紹介しながら、AIが解析作業を担うようになった際に人間に残る役割や、今後のCAE教育で重視すべきスキルについて考察した。

CAE操作は「本質的にはコーディング」ともいえる

 まず、AIエージェントにCAEツールを操作させる取り組みの出発点について、宮堂氏は次のように説明した。

「CAEツールというとGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)のイメージが強いが、実際にはその裏でコマンドが動いており、それによって解析を実行している。コマンドは結局コードなので、AIがコードを書ければCAEを動かせるはずだ、というのがそもそもの着想である」(宮堂氏)

CAE操作=コーディングではないか? CAE操作=コーディングではないか?[クリックで拡大] 出所:サイバネットシステム

 ソフトウェア開発では既に、従来の人がコーディングする形から、AIがコードを書き、人間がレビューやマネジメントを担う形へと仕事の進め方が変わりつつある。これに伴い、人が担う役割も実装そのものから設計やレビュー、AIの管理へと変化している。

 宮堂氏は「これからはCAE解析も、おそらくAIが動かすことが一般的になっていくだろう。そうなると、人の役割もツールの操作ではなく、判断やマネジメントに移っていくのではないか」と、同様の変化がCAE解析にも訪れるとの見方を示した。

 その際に重要になるスキルとして、問題設定や検証、AI管理などを挙げている。

AI時代、CAE教育の前提が変わった AI時代、CAE教育の前提が変わった[クリックで拡大] 出所:サイバネットシステム

AIがコードを書き、CAE解析を自律実行

 宮堂氏は、AIエージェントにPythonコードを書かせ、そのコードを実行することでCAEツールを操作する実験を行った。AIエージェントには「ChatGPT」アプリの「Codex」を使用し、作成されたコードや成果物の確認には「Visual Studio Code(VS Code)」を用いた。CAEソルバーは「Ansys MAPDL(Mechanical APDL)」または「CalculiX」である。

 AIエージェントは、解析目的に応じて必要な処理を考え、Pythonコードを作成してCAEツールを実行。そこで得られたログやエラーメッセージ、計算結果などを受け取り、次に何をすべきかを判断する。こうした一連の処理を自律的に繰り返し、最終的なアウトプットを人間がレビューする仕組みだ。

自律型CAE AIエージェントの実験 自律型CAE AIエージェントの実験[クリックで拡大] 出所:サイバネットシステム

 最初の実験では、中央に円孔を設けた薄板の引張解析を行った。形状や材料特性、拘束条件、荷重条件、必要な出力などをプロンプトに記述してAIへ与えた。

自律型CAE AIエージェントの実験(1) 自律型CAE AIエージェントの実験(1)[クリックで拡大] 出所:サイバネットシステム

 解析を始める際の指示について、宮堂氏は次のように説明する。

「いきなり解析を実行させてもよかったが、最初に解析計画を立てさせた方が安全だと考えた。そのため、まず計画を立て、不明点があれば確認するよう依頼した」(宮堂氏)

 実際、「右端にX方向へ10Nの分布荷重を与える」と記述したところ、AIは、それが合力10Nなのか、線荷重10N/mmなのか、面圧10MPaなのかを確認してきた。それぞれが何を意味するのかを説明した上で、推奨する選択肢まで示したという。

 作成された解析計画では、板厚が薄いことから2次元の平面応力モデルとして扱う方針を立てた。また、板厚を厚くした場合には、3次元ソリッドモデルを使う提案に変わったという。さらに、メッシュ収束性や力の釣り合いなども検証項目に盛り込まれた。

 解析後には、解析目的、解析条件、結果、考察などから成る解析結果レポートを自ら生成した。レポートの書式について細かな指示はしていなかったが、一般的な解析報告書の構成にまとめられたという。

自律型CAE AIエージェントの実験(1):解析結果レポートの抜粋 自律型CAE AIエージェントの実験(1):解析結果レポートの抜粋[クリックで拡大] 出所:サイバネットシステム

 「簡単な例ではあるが、AIエージェントは想像以上に賢い。FEM(有限要素法)の手順や勘所を理解しており、実装もできる」と、宮堂氏は手応えを語る。

 この「実装できる」という点が、通常の生成AIとAIエージェントとの違いになる。AIエージェントはプロンプトに回答するだけでなく、自ら行動して結果を受け取り、次の判断につなげる一連の処理を自律的に実行できる。解析結果の考察やレポート作成も可能だ。

 また、先ほどの解析ではAnsys MAPDLを使用したが、ソルバーをCalculiXに変更しても同様に動かすことができた。内部で行う処理は大きく変わるものの、「人間がAIへ指示する手順はおおむね変わらない」(宮堂氏)という。

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