3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、機械要素に関するアナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第21回は、3D CADで「形を作る」ことと「設計する」ことの違いを通して、機械設計における3D CADの役割を考える。
これまで、機械設計についてさまざまな角度から考えてきました。前回の最後では、設計の進め方を次のように表しました。
考える ⇒ 形にする ⇒ 確認する ⇒ また考える
筆者は、この繰り返しこそが設計なのだと考えています。今回からは、このサイクルを回すための道具である「3D CAD」について考えてみましょう。
今では、機械設計で3D CADを使うことも珍しくありません。若手エンジニアの皆さんの中には、学校で最初から3D CADを学んだという人もいるでしょう。では、ここで1つ質問です。
「3D CADが使える」とは、どういうことでしょうか。それは、次のような操作ができることでしょうか。
もちろん、それらも必要なスキルです。しかし、筆者は操作ができるだけでは「3D CADを使って設計している」とはいえないと思っています。
例えば、3D CADの操作を覚えたばかりのころを思い出してみましょう。平面を選び、長方形のスケッチを描いて寸法を入れます。それを押し出して立体にし、円を描いて穴を開ける――。必要な角には、丸みを付けるフィレットを施します。こうした操作を重ねると、画面の中に部品の立体形状が現れます。
最初に3D CADに触れたとき、この瞬間に面白さを感じた人も多いのではないでしょうか。筆者も、形を見ながら考えられることに3D CADの大きな魅力があると思っています。
では、長さ100mm、幅60mm、板厚10mmのプレートができたとしましょう。その寸法について、次のように尋ねられたらどう答えますか。
3D CAD上では、寸法を入力すれば、その形を簡単に作れます。しかし、設計では数字を決めた理由が重要です。長さ100mmは、取り付ける部品の大きさから決まったのでしょうか。必要なストローク、つまり部品が移動する距離を確保するためでしょうか。それとも、周囲の部品との干渉を避けた結果なのでしょうか。
板厚10mmについても同じです。加わる荷重に対して必要な強度を確保するためなのでしょうか。荷重による変形を許容できる範囲に抑えるためなのでしょうか。
実際には、複数の条件を確認し、折り合いを付けながら寸法を決めていきます。こうして考えると、3D CADで形を作ることと、機械を設計することは同じではないと分かるはずです。
寸法を決めるには、プレート単体だけでなく、周囲の部品との関係も考える必要があります。ここで、2D CADと3D CADについて考えてみましょう。
筆者は長く機械設計に関わってきましたが、2D CADを中心に設計していた時代も経験しています。2D図面では、正面図、平面図、側面図など、異なる方向から見た図を手掛かりに、設計者が頭の中で立体を組み立てます。経験を積んだ設計者なら、図面から複雑な形状を思い描くこともできるでしょう。これは大切な能力です。一方、機械が複雑になり、部品点数が増えると、全ての部品の位置関係や動きを頭の中だけで把握するのは簡単ではありません。
そこで3D CADの良さが出てきます。例えば、これまで本連載でも取り上げてきた直動機構を考えてみましょう。モーターの回転を利用して、プレートを直線方向に動かす機構です。ここでは、次のような部品で構成されているとします。
これらの部品を3D CAD上で組み合わせて配置したものが、アセンブリです。部品単体の形だけでなく、それぞれがどこにあり、どう組み合わさるのかも確認できます。
部品を組み合わせた状態で見ると、例えば次のような疑問が浮かんできます。
筆者は、ここが3D CADのとても面白いところだと思っています。形にしたことで、新しい疑問が生まれるのです。
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