3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、機械要素に関するアナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第20回は、これまで学んできた機械要素を「役割」と「力の流れ」の観点から整理し、要素設計と機械設計全体の関係、3D CADで形を作る前に考えるべきポイントを取り上げる。
前回は、機械要素の中でも身近なボルトやねじなどの締結要素について取り上げ、最後に次のようなお話をしました。
機械要素は、3D CAD上に配置できれば設計が完了するわけではありません。その役割や働きを理解し、形状や構造に反映して初めて、適切に使いこなせるのです。
今回は、この言葉から話を続けたいと思います。これまで「要素設計」として、軸、軸受、歯車、ベルト、チェーン、カップリング、ガイド、ボルトやねじなど、さまざまな機械要素を見てきました。
ここでは、それぞれを個別に説明するのではなく、「機械の中で何をしているのか」という視点で整理してみましょう。
例えば、モーターを使って何かを動かす機械を考えてみましょう。
モーターの回転を機械の各部へ伝える際には、一般的に軸が使われます。その軸を滑らかに回転させるために用いるのが軸受(ベアリング)です。回転速度やトルクを変えるなら歯車、離れた場所へ回転を伝えるならベルトやチェーンといった方法があります。
その他にも、軸同士をつなぐカップリング、直線運動を案内するガイド、部品を固定するボルト、位置を決めるピンなどが挙げられます。
| 機械の中での役割 | 代表的な機械要素 | 主な働き |
|---|---|---|
| 回転を支える | 軸受 | 軸を支え、滑らかに回転させる |
| 回転や力を伝える | 軸、カップリング | 回転やトルクを伝える |
| 回転速度や方向を変える | 歯車 | 回転数、トルク、方向を変える |
| 離れた場所へ動力を伝える | ベルト、チェーン | 離れた軸へ回転を伝える |
| 動きを案内する | ガイド | 決められた方向へ動かす |
| 固定する | ボルト、ねじ | 部品同士を締結する |
| 位置を決める | ピン | 部品同士の位置関係を決める |
| 表1 機械要素の役割 | ||
大切なのは、名称を覚えることだけではありません。「何をしたいのか。そのためにどの機械要素を使うのか」という順番で考えることです。
使う機械要素の種類を決めたら、次に考えるのは「そこにどのような力がかかるのか」です。
分かりやすい例として、ベアリングを見てみましょう。ベアリングは軸を支えるために使いますが、軸径に合うものを選べばよいわけではありません。
軸を横から押す方向の「ラジアル荷重」なのか、軸を長手方向に押したり引いたりする「アキシアル荷重」なのかを確認する必要があります。その上で、荷重の大きさに加え、回転速度や必要な寿命も踏まえて選定します。
| 荷重の種類 | 力の方向 | 覚え方 |
|---|---|---|
| ラジアル荷重 | 軸に対して直角方向 | 軸を「横から」押す力 |
| アキシアル荷重(スラスト荷重) | 軸と同じ方向 | 軸を「長手方向に」押す/引く力 |
| 表2 ラジアル荷重とアキシアル荷重 | ||
実際の機械では、この2つが同時に作用することもあります。例えば、軸にプーリーを取り付けてベルトで引っ張れば、軸には横方向の力が生じ、その力は軸を通してベアリングにも伝わります。
さらに、ベアリングを選んだ後には、軸やハウジングとのはめ合い、軸方向の位置決め、組み立て方法なども考えなければなりません。つまり、ベアリングが3D CAD上に収まることと、そのベアリングを使った設計が成立することは別の話なのです。
ここでもう少し視野を広げてみます。
図2の直動機構では、左側の駆動源で発生した回転が、カップリングなどの連結部を介してボールねじへ伝わり、スライド部分を動かします。具体的には、
駆動源 ⇒ カップリングなどの連結部 ⇒ ボールねじ ⇒ スライド部
という流れで動力が伝わり、ボールねじによって回転運動が直線運動へ変換されます。
一方、上部プレートに部品や装置を載せれば、その重量による荷重がスライド部分に加わり、実際の直動機構では、こうした荷重を直動ガイドなどの案内部で受けてベースやフレームへ伝えます。また、スライドを加速/減速すると、搭載物の質量に応じた慣性力が生じる点にも注意が必要です。
上部プレート ⇒ スライド部 ⇒ 直動ガイドなどの案内部 ⇒ ベース/フレーム
このように、設計者は駆動力だけでなく、機械全体で力がどのように伝わるのかを見る必要があります。例えば、
といったことを、1つずつ確認していきます。
つまり、「力はどこから入り、どの部品を通り、最終的にどこで受けるのか」という流れを追うことが、要素設計ではとても大切なのです。
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