データスペース時代に日本企業はどう備えるか、NTTグループが進める仕組みづくり加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(10)(1/5 ページ)

欧州を中心に広がるデータ共有圏の動向と、日本産業への影響を解説する本連載。第10回では、データスペースのグローバルな普及を見据え、日本企業が安全かつ容易に接続できる環境の整備を進めるNTTグループの取り組みを紹介する。

» 2026年08月20日 07時00分 公開

連載概要と本記事の位置付け

 本連載では、「加速するデータ共有圏/データスペースの最新動向と日本の産業へのインパクト」をテーマとして、データ共有圏/データスペースの動向やインパクト、IDSA(International Data Spaces Association)、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説してきた。第10回では、グローバルでデータスペース化が進む中で、日本企業がこれらへのアクセスを確保するための環境づくりを進めているNTTグループの取り組みを紹介する。

≫連載「加速するデータ共有圏と日本へのインパクト」目次

データ共有圏(データスペース)とは

 データ共有圏はデータスペース(Data Space)とも呼ばれている。データの共有/交換は、従来は電子メールやプラットフォームを介したデータ共有が一般的であり、提供されたデータの活用やマネタイズについてはプラットフォーム側が実施し、データ所有者は関与できないものだった。

 一方で、現在欧州発で検討が進むデータ共有圏=データスペースについては、データの出し手と受け手をコネクターで直接つなぐ分散型の共有となる。コネクターを活用し、データ所有者と利用者が直接データ共有を実施する。データ主権が担保され、データ所有者が「他者がデータをどのように、いつ、いくらで利用できるかを自己決定することができる」のが特徴だ(図1)。

図1 図1:欧州が展開しているデータ共有圏[クリックで拡大] 出所:筆者作成

 環境負荷の低減や脱石油、省エネルギー、カーボンフットプリント(CFP)、そして製品のトレーサビリティーに対する要求が世界的に高まる中、企業間でデータを安全に自由にやりとりできるデータスペース化の動きはさまざまなところで広がりつつある。連載第5回でも紹介したが、欧州では自動車産業向けデータ連携基盤「Catena-X(カテナエックス)」などが立ち上がり、日本メーカーにも対応が求められるようになっている。企業や国境を越えたデータのやりとりが、新たな競争力の源泉となり、グローバル市場における「取引の参加条件」へと変貌しつつあるのだ。

 その中で、日本企業が安心、安全かつ簡単にデータ連携を行える環境づくりに邁進(まいしん)しているのが、NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)をはじめとするNTTグループである。本記事では、データスペースの専門家であるNTTドコモビジネス ソーシャルイノベーション部 Trusted Data Fabric部門 担当部長の境野哲氏と同 担当課長 平野敏行氏に、なぜ今データスペースが求められているのかという背景と、NTTグループでの取り組み、日本企業がとるべきアクションなどについて、話を聞いた。

データスペース普及を見据えたNTTドコモビジネスの歩み

 「データスペース」は、巨大な中央集権型クラウドに全データを集約するのではなく、データを提供する企業が自らデータの開示範囲を決定しコントロール権を保持し続ける「データ主権」を保護しながら、分散/偏在するデータをフェデレーテッド(連邦型)に共有する仕組みだ。クラウドやAPI(Application Programming Interface)、セキュリティ技術などが進化したことや、国際標準や法整備といったルールの策定が進んだことで、データスペースを社会実装するための条件がそろいつつある。

photo 日本経済団体連合会(経団連)が構想する日本の産業データスペースとトラスト基盤[クリックで拡大] 出所:経団連

 こうした潮流を見据え、NTTグループは「世界中のすべてのお客様が、データスペースの仕組みを手軽に、安心・安全・簡単に使えるネットワークサービスを作りたい」というビジョンの下、2019年からいち早くデータスペース領域での取り組みを進めてきた。

 NTTグループはこれまで、IDSAやドイツのフラウンホーファー研究機構などと協力し、国際的なデータ交換の実証実験を重ねてきた。さらに日本国内の自動車メーカーや素材メーカー、産業オートメーション関連企業とのトライアルを通じ、実運用レベルに近づけてきた。その実績が結実し、2025年2月には日本初となる「Catena-X オンボーディングサービスプロバイダー」の認定を取得した。これにより、Catena-X標準データスペースを利用したい日本企業に対し、Cofinity-XやT-Systemsなどが提供するデータスペースのコアシステム環境への登録手続きをサポートする体制が整い、導入のための水先案内人としての地位を確立している。

 NTTグループのデータスペース推進を語る上で欠かせないのが、同社エバンジェリストである境野哲氏の存在だ。

 境野氏は日本国内での啓蒙活動にとどまらず、国際的なデータスペース推進のキー組織であるIDSAのボードメンバーを務めるなど、ドイツをはじめとする欧州のデータスペースの標準化と普及を進める組織の幹部として活動している。

 そのため、欧州のルールメイキングやアーキテクチャの最新動向をリアルタイムで日本へと還元するだけでなく、IDSA内に世界各国の通信事業者がデータスペースの国際相互運用について議論するコミュニティーを創設したり、データスペースにおけるAIの安全な運用方法を実証する国際共同テストベッドのチームを形成したりするなど、「日本と欧州の架け橋」としての役割を担っている。

photophoto NTTドコモビジネス ソーシャルイノベーション部 Trusted Data Fabric部門 担当部長の境野哲氏(左)と、同 担当課長 平野敏行氏(右) 出所:NTTドコモビジネス

 こうしたグローバルなネットワークと知見を持つキーパーソンが最前線で議論をリードしているからこそ、NTTグループでは、国際的な動きや標準化、将来性などを踏まえ、データスペース活用の在り方について、方向性を示すことができる。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR