普通、このような装置を納品すると次の注文は来ないのですが、グループ会社だということもあって2号機の引き合いがあり、レーザーリペア装置を一から再設計することになりました。今度は設計初期段階から参画し、少しぜいたくな設計をしました。
1号機では、微小動作のために別途XYZテーブルを用意しました。これは、リード(ねじ1回転当たりの進み量)の小さなボールねじが必要だったからです。2号機では「大きな動作と小さな動作は、下側のXYテーブルだけで全て済むのでは?」と提案したところ、チームの大半からリスクが大きいとの反対意見がありました。
というわけで、手持ちのXYテーブルで図3のような動作ができるかを確認しました。手持ちのXYテーブルのボールねじのリードは20[mm]と大きかったので、サーボゲインをサーボモーターが発振するギリギリまで上げて試験しました。
図7のように支持体の弾性変形があるので、サーボモーターのエンコーダー出力の他に、XYテーブルに渦電流変位計を取り付けて実際の動きを測定しました。きれいな動きが観測されたので、下側のXYテーブルで全て済ませる設計となりました。サーボゲインをギリギリまで上げたので、ボールねじから金属音がしたのを覚えています。
2号機は小さなリードのボールねじとしたので、サーボゲインはあまり大きくする必要はありませんでした。サーボ調整は製品付属のオートチューニング機能を使うだけで済みました。小さなリードのボールねじは製作できるメーカーが限られていたので、ボールねじの発注先と直動ガイドの発注先が異なっていたことも記憶しています。
今回の事例から、以下の教訓もあるかと思います。
メカ振動の可能性があるのだから、サーボモーターのエンコーダー出力やステッピングモーターのパルス数が正しくても、所望の動きをしているとは限らない。
いずれお話しする「直動ガイドのレイアウト失敗例」で紹介しますが、図5で示したX軸テーブルは、見た感じではゴツゴツしていて剛性が高そうです。しかし、直動ガイドやボールねじを使ったX軸テーブルの剛性はあまり高くなく、それをばねとしてモデル化できます。剛性が低い理由はいずれ説明します。図8の支持構造物もばねとしましょう。
図13に1号機と2号機をばねで表現したものを示します。前述したように、2号機は「下側のXYテーブルで全て済ませる設計」ですが、レーザー光のピント合わせのために上側にZ軸があります。
直列つなぎと並列つなぎのばね定数を考えましょう。図14に、ばねの直列つなぎと並列つなぎを示します。図のように直列つなぎをしたときのばね定数は2分の1になります。
では、今回の装置をばねと考えて、ばね定数を求めてみましょう。1号機の上側はばね4本の直列つなぎなので、ばね定数は4分の1で、下側はばね2本なので2分の1です。両者を掛け算するわけにはいかず、小さい方のばね定数を採用しましょう。
一方、2号機の上側はばね2本なので、ばね定数は2分の1で、下側もばね2本なので同じく2分の1です。小さい方を採用して、2号機のばね定数は1号機の2倍となりました。これは1号機、2号機とも「ヘタなXYテーブル」を設計した場合です。当然、2号機のXYテーブルは剛性に関して配慮がされています。
図15に直列つなぎのばねの変形を示します。支持構造物は「縦線、縦線、横線、横線、トリム、トリム、トリム」手法で設計されていたため剛性が低く、そのばね定数が相対的に極端に小さかったと考えられます。すると、荷重時には支持構造物に相当するばねは大きく伸びます。
上側XYZテーブルがしっかり設計されていたとしても、支持構造物で全体が台無しになってしまいます。
今までのシリーズでは「振動対策の万能薬は、ばね定数の向上だ」と言ってきました。ほとんどの機械は、ばねの直列つなぎだと考えていいでしょう。例外としては6軸パラレルリンク機構がありますね(実は今、制御を含めて設計しています)。ここで言いたいことは以下です。
1つでも剛性の低いユニットがあったら、他のユニットをしっかりしたものにしても振動面で台無しとなってしまう。
2号機はというと、原因は支持構造物だと分かっていたので、支持構造物はCAE解析を駆使して高剛性設計としました。下側のXYテーブルはボールねじのリードを1[mm]として微小変位に有利なものとしたので、サーボゲインは回転時に金属音が聞こえるような高い値ではなく、余裕を持ったゲインで済みました。また、XYテーブルの剛性を高くしたかったので、ボールねじ、直動ガイドともに与圧品に変更しました。
駆動軸が5軸から3軸になったことで、コスト低減にも寄与しています。
今回はこの辺としましょう。次回はレーザーリペア装置の2号機の詳細と、弱い部分が1箇所でもあると台無しになったメカの2例目をお話しします。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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