レーザーリペア装置が必要となる場面は少ないほどいいのですが、工場の生産ラインで使われている以上、1時間当たりの処理枚数を多くすることが常に求められます。そうすると必要とするレーザーリペア装置が少なくて済み、初期投資額が減ります。
というわけで、図3で示したレーザー光の照射は短時間で完了させなければならず、XYZテーブルの移動速度は速いものとなります。ただ速いだけではなく、加速/減速も瞬時に終わらせなければなりません。つまり、XYZテーブルの加速度が大きいものとなります。
図7にレーザーリペア装置を真横から見た図を示します。XYZテーブルは支持構造物(普通、「コラム」とか呼んでいます)で支えられています。支持構造物の剛性が低かったとしましょう。ばね定数が小さいとお考えください。
Y軸を急加速したとき、X軸のメカの質量に加速度を乗じたものが慣性力になりますね。X軸のメカには慣性力が発生します。ということは、その反力はY軸が受け止めることになります。
今、図8に示したように上側Y軸をCP制御で急加速で動かしたとしましょう。慣性力が上側Y軸のボールねじに作用して支持構造物が変形します。この結果、レーザー光が傾き、照射位置がズレます。
図9に、前述した変形が生じた場合のレーザー光の照射経路を示します。この図は説明のために大げさに描いたものです。図のように、CP制御による走査経路が千鳥足で歩いているような状態になっています。レーザー光の照射点を顕微鏡で見ると、すぐに分かってしまいました。
サーボモーターのエンコーダー出力はプログラム通りの値を出力しているので、モーターとボールねじは所望の回転をしています。よって、支持構造物が弾性変形していたと考えられます。支持構造物の剛性が小さかったのです。
オマエ、縦線、縦線、横線、横線、トリム、トリム、トリムで構想図を描いただろ。
当時の職場は2D CADを使っておりました。前述した「千鳥足問題」の相談が筆者のところに舞い込んだとき、その構想図を見て、装置の図面を描いた方が在席していないことを確認してから、「この装置の構想図、縦線、縦線、横線、横線、トリム、トリム、トリムのノリで描いたのではないですか」と言ってしまい、「高橋さん、身もふたもないことを言わないでください」とたしなめられました。
2D CAD作図における「縦線、縦線、横線、横線、トリム、トリム、トリム」を説明しますね。まず、図10に示すように縦線と横線をパパパっと描きます。板厚10[mm]として、間隔は10[mm]です。
トリムというのは、縦線と横線の交点で縦線と横線を分割し、片方を消去する2D CADのコマンドです。図11にトリム工程を示します。
図10の線をトリムすると図12のようになり、構想図が出来上がります。「縦線、縦線、横線、横線、トリム、トリム、トリム」作業に集中していると、装置剛性がどうなるかまでの配慮が行き渡らず、そのまま作ってしまったのがこの装置だったと思います。
ドラフターで図面を描いていたころは、線と線を引く間に数秒から数十秒の余裕があるので、他に配慮すべき点に気付くのですが、「縦線、縦線、横線、横線、トリム、トリム、トリム」作業の時間間隔は0.5秒くらいなので、気付く余裕がないのだと推測しています。
3D CADでも少なからず似たような作業があると思いますので、少し注意が必要です。
取りあえず、今問題となっている装置は装置剛性を上げる改造をして、千鳥足の程度を小さくして対策しました。今まで何度も言ってきたように、振動対策の第一選択肢はばね定数を大きくすること、つまり装置剛性を上げることです。
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