3つ目が、X線被ばく量の視覚化とシミュレーションだ。電子基板に実装される半導体部品は、X線に対する感受性が高く、過剰な被ばくは製品破壊の恐れがある。そのため、X線検査においては、検査品質を維持しつつ、部品への総被ばく量を必要最小限に抑制することが重要となる。ただ、従来はX線検査の過程で線量を実測することは困難で、シミュレーションは平面的な(2次元)情報しかなかった。
今回は、オムロンのX線検査による被ばく量をNVIDIA Omniverseでリアルタイムで3次元画像に反映させて可視化し、部品単位の高精度な被ばく量の把握ができるようになった。設計段階で、検査精度やタクトタイムとの最適なバランスをシミュレーションできるようになる。
4つ目が、VSS(Video Search and Summarization)技術を活用したAIエージェントによる検査業務の簡易化だ。検査機のオペレーションは、刻々と変化する現場の環境に円滑に対応する必要があるが、人手不足が深刻化する中で、トレーニングに十分に時間がかけられないケースが多い。そこで、NVIDIAのVSS技術を使用し、画像を説明できる「視覚言語モデル(VLM)」と、前後関係や状況を理解しながら過去の情報をもとに最適な解を答えるモデル(Graph RAG:グラフ検索拡張生成)を組み合わせることで、ユーザーに対して最適な判断と提案を行えるようにした。
例えば、初心者ユーザーが「この基板はなぜ反っているの?」と自然言語で問いかけると、AIエージェントが過去に学習した内容から似た特徴を持った反りの画像とその要因を探し出し、フィードバックすることが可能だ。「VLMでは一般的には2次元画像を読み解くものが中心だが、基板検査装置では、3次元画像の活用が中心となっているため、今回は3次元画像を理解できる仕組みを採用しており、この技術は特許を申請している」(オムロン)。
5つ目は、これまでの4つのソリューションの土台となるような技術で、NVIDIA Omniverseとの連携を円滑にするというものだ。モノづくりの工程において、CAD設計、工場運用など、各プロセスの使用ソフトや言語はバラバラで、情報の連携に人手による調整が必要だった。これを検査装置側で、Omniverseで採用されている3DフォーマットのOpen USD(Universal Scene Description)を採用することで、各プロセスと共通言語での連携が可能となる。
今回の5つのソリューションについてはまだ実証中で、最終的に基板検査装置にどのように組み込まれ、どのような製品形態となるのかは「決まっていない」(オムロン)という。
ただ、現在はオムロンの工場および、一部顧客企業に協力してもらい、現実的な使用方法などの検証を進めているところだ。「実用化は、顧客にどのくらい価値を提供できるのか、コスト削減できるのかなどを見ている。現状で課題として感じているのは、熟練技術者のノウハウを仕組みに組み込んでいくところだ。AIエージェント機能などを使えるように進化させていくためには、熟練者の知見は欠かせないが、それをうまく蓄積し、使えるようにしていくところで試行錯誤している」(オムロン)としている。
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