「ファクトリーイノベーションWeek2026」の2日目に当たる2026年1月22日、「知能化・AI化が進むロボットと工場:世界最先端事例から学ぶ」と題した特別講演が行われ、フォックスコン(鴻海精密工業)とNVIDIA、川崎重工業が登壇した。
「ファクトリーイノベーションWeek2026」(2026年1月21〜23日、東京ビッグサイト)の2日目に当たる同月22日、「知能化・AI化が進むロボットと工場:世界最先端事例から学ぶ」と題した特別講演が行われ、フォックスコン(鴻海精密工業)とNVIDIA、川崎重工業が登壇した。
フォックスコンテクノロジーグループ(鴻海科技集団) ロボット自動化技術センター 技術長の王樹華氏は「EMS製造におけるロボットと自動化のトレンドとアプリケーションの概要」と題して、EMS(電子機器受託製造サービス)における製造技術の発展や、フォックスコンが推進する「3+3+3戦略」、フィジカルAI(人工知能)による製造業の変革、フォックスコンの自動化/ロボット戦略などについて講演した。
王氏は中国出身だが、山梨大学に留学してスカラロボットの発明者である牧野洋氏の下で学び、安川電機グループの安川情報システムに入社後、2015年からフォックスコングループに入社という経歴の持ち主で、日本語も堪能だ。
フォックスコンは1974年に台湾で創業。現在はあらゆる電子機器の製造を手掛ける世界に名だたるEMSだ。世界の24カ国に233の工場を持ち、従業員数は100万人。2024年のEMS市場のシェアは44.2%に達する。10万体以上のロボットを活用しており、王氏はそのロボットと自動化戦略推進に携わっている。
フォックスコンは現在のICT製品を中心とするEMSのビジネスモデルから、「3+3+3」と呼ぶ方向性に基づく成長戦略をとっている。「3つの未来産業」であるEV(電気自動車)、ロボット、デジタルヘルス、そして「3つのコア技術」であるAI、半導体、次世代通信、そしてこれらによってスマートシティー、マニュファクチャリング、スマートEVという「3大プラットフォーム」を支えるというものだ。つまり同社は今、製造請負からプラットフォームを提供する企業へと転換しようとしているのだという。
その中で、フォックスコンではDX(デジタルトランスフォーメーション)からさらに一歩進んだ「AX(AIトランスフォーメーション)」を提唱している。これから身体性を持つAIであるフィジカルAIの時代に入り、ロボットとAIが融合する時代になると考えられる。ロボットは、従来の受動的な自動機械ではなく、能動的に理解し判断する自律型システムとなる。市場は年平均60%近い高い成長率が見込まれており、2050年には6億台規模になると予想される。特に製造業では急激にAI搭載協働ロボットなどが普及すると考えられている。フォックスコン自身も2006年から自社製ロボット「FOXBOT」を開発/活用しており、年間生産量は約3000〜5000台に上る。現在、工場内で稼働する7万台規模のロボットの約半数が自社製となっているという。
これからの「AI+ロボット」においてはシミュレーションとAIファーストのアプローチが重要となり、技術トレンドは視覚/力覚の融合、高速/高精度化、プラットフォーム化、協働ロボットの活用、フレキシブル化、自律化などが考えられる。従来のロボットはティーチングが必要で導入に時間がかかった。フォックスコンではNVIDIAの「Omniverse」などを活用し、デジタルツインでのシミュレーションを重視しているという。王氏は、合成データと仮想空間を使ってロボットを学習させる“Sim-to-Real”を行うことでティーチングなしの制御を実現していると述べ、スマートフォン筐体への部品の圧入工程で、視覚で位置補正し、力制御で圧入力プロファイルを適応制御する事例を紹介した。そして「フォックスコンはさまざまなフィジカルAIのコアコンポーネントサプライヤーを目指す」と語った。
フォックスコンの製造については労働集約から設備集約、そして今後は「AI集約」になると進化段階を紹介した。ここで言うAI集約とは、フィジカルAIによるアプリケーション革命のことを指す。王氏は「プラットフォーム構築と製造シナリオモデルの構築、実装とシミュレーションによるモデル最適化、そして漸進的イテレーション、エコシステムの構築が重要だ」と述べた。プラットフォームはさまざまな機器構成を容易に再構成できる知能アーキテクチャであり、あらゆるレベルでのロボットアプリケーション開発もサポートする。
工場における実装戦略は、作業の複雑さとフレキシブルニーズに基づいてレベル1〜3の3つに分類している。簡単かつ固定、フレキシブル、そして複雑かつフレキシブルへと作業の難易度が上がっていく。それぞれレベルの異なる機器を製造シナリオモデルに合わせて組み合わせることで設備を最適化する。製造シナリオモデルの構築には、NVIDIAのOmniverseや世界基盤モデルの「COSMOS」を活用する。王氏は「単一プロセスから着手し、標準化モデルを構築することが重要だ。まずはビジョンを使って検品や組み立てから着手し、モデルを組み合わせて多工程に適用する計画だ」と語った。
レベル1のフィジカルAIの例としては、精密加工品のロード/アンロードを、レベル2の例としてはビジョンと力制御を組み合わせたFBCケーブル組み立て、レベル3としては「ヒューマノイドも導入していきたい」(王氏)という。そして今後のロードマップとして、おおよそ1〜2年でプラットフォームを構築し、3〜5年で機能モジュール化/標準化を進める。長期(5年)としてAIファクトリー化/自律化/フレキシブル化を目指すと語った。そして工場/倉庫における現状だけでなく、中国UBTechのヒューマノイドを含めたさまざまな機器が連携する未来像を紹介した。
フォックスコンは、世界経済フォーラムが選定する最も先進的な工場である「ライトハウス」を世界で最も多く有する企業だ。現状では約7割の工程で自動化が進んでいるが、今後さらなる自動化がヒューマノイドやAIロボットの活用によって進むことで、生産性がいっそう向上すると見ているという。
そして「産学パートナーと連携しスマート製造エコシステムを構築しフィジカルAIによるAXを実現する。これからは自動化の時代。われわれだけではできない。日本は精密加工技術を持っている。世界のたくさんの方とフィジカルAI、AXを進めていきたい」と講演を締め括った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
組み込み開発の記事ランキング
コーナーリンク