型技術事務所モートの講演では、同社 技術部長の高(正しくは、はしご高)橋太氏が「自動車内装部品成形型への3Dプリンタ活用」と題し、自動車シートに用いられる裏面材フェルトの成形型を3Dプリンタで製作した事例を紹介した。
同社は、神奈川県二宮町を拠点とする自動車シート部品の生産技術開発や型設計、製作を手掛ける企業で、設計、製作、計測、解析を循環させながら製造方法の改善に取り組んでいる。今回のテーマとなった裏面材フェルトは、シート内部でウレタンフォームと骨格フレームの間に配置され、ウレタンフォームの保護や補強、擦れ音の防止、発泡時のガス排出などを担う。
同社はこのフェルトを型で成形する方法に着目し、その成形型を独自に作り込む技術を培ってきた。成形型のモデル製作には通常、高額なNC加工機が必要となるが、同社は汎用(はんよう)ロボットで加工する仕組みを開発して対応してきた。
ただし、アルミ鋳造で作る型は、ねじれやひずみが生じやすく精度が安定せず、鋳造や溶接、組み付けの各工程に職人の手も要する。そこで同社は、自社が保有する大型3Dプリンタを用いて、樹脂で成形型を造形する方法に取り組んだ。
従来のアルミ型は、型設計、モデル加工、アルミ鋳造、組み付けを経て納入まで約16日を要していた。これに対し、3Dプリンタで樹脂型を製作する方法では、アルミ型と遜色ない成形品が得られ、リードタイムを半分の8日に短縮できたという。
完成した樹脂型をCADの設計データと照合したところ、全体にわたって設計値との差は±2mm程度だったという。高橋氏は「最終的に扱う製品は布であるため、それほど高い精度は要求されない」と述べ、用途に必要な精度を十分満たしていると説明した。
さらに同社は、蒸気と真空でフェルト全体を成形する従来工法を見直し、必要な箇所だけを部分的に成形する「ドライセット工法」も開発した。設計変更が生じやすい箇所のみを電気とエアで成形する方式で、型を「汎用部」と「加熱部」に分割し、脱着できる構造とした。形状変更時は該当部分の型だけを差し替えればよく、リードタイム短縮につながる。
ドライセット工法では、バリ切りやマグネット取り付けも自動化し、作業者1人で約20秒に1枚のペースで成形できる。蒸気のボイラーや真空ポンプも不要となり、省エネルギー化にも寄与するという。
この他、同社ではロボット用のツールや検査治具など、生産工程でも幅広く3Dプリンタを活用している。高橋氏は「培ったウレタン成形技術を基盤に、シート部品の生産技術面で積極的に提案を行い、多くの方々とともに課題解決の一端を担っていく」と述べ、講演を締めくくった。
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