既存設備そのままで熱処理炉を電化、大改造不要の新型ヒーター材料技術

製造業における脱炭素化が急務となる中、「既存設備の電化」は大規模な改造やコストがかかるという問題がある。そこで大同特殊鋼は、現在稼働している熱処理炉のバーナーを取り外して入れ替えるだけで電化を実現できるラジアントチューブヒーター「D2-ERTH(ディーアース)」を発売する。

» 2026年06月30日 07時45分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 大同特殊鋼は2026年6月29日、熱処理炉のカーボンニュートラルに貢献する加熱装置として、電気をエネルギー源としたラジアントチューブヒーター「D2-ERTH(ディーアース、Daido Dual-Mode Electric Radiant Tube Heater)」を開発し、同年8月に発売すると発表した。

ラジアントチューブ冷却機能も搭載

 日本政府が目標として掲げる「2050年までのカーボンニュートラル実現」に向け、温室効果ガスの排出削減ニーズは年々高まっており、熱処理炉でもこの対応が求められている。

 一方、同社は1980年に線材コイルや各種冷間鍛造品といった多品種小ロット製品の多様な熱処理を可能にした「STC炉」の初号機をリリースして以降、国内外で350基以上を販売し、現在も多くの設備が稼働している。

 2016年には高効率熱交換器「DINCS」を、2022年には高性能な省エネシステムを搭載したプレミアムSTC炉を開発/販売するなど、サプライチェーンのCO2排出量削減に貢献する製品を提供してきた。近年では、燃焼ガスに水素を用いたラジアントチューブバーナー「水素バーナー」を開発し、STC炉への実装評価を進めるなど、STC炉の完全カーボンニュートラルを実現するべく開発を継続している。

「D<sup>2</sup>-ERTH」の外観 「D2-ERTH」の外観[クリックで拡大] 出所:大同特殊鋼

 こうした中、熱源の電化とCO2フリー電力の活用によるCO2排出量の削減は、水素社会実現までの移行過程において有効な手段と考えているという。同社は今回、STC炉を利用している顧客も導入しやすくするため、ラジアントチューブを流用できるD2-ERTHを開発した。

 D2-ERTHは、加熱装置にラジアントチューブバーナーを使用している熱処理炉全般に適用可能で、現在使用しているバーナーを取り外して同ヒーターに入れ替えることができる。そのため、設備の大幅な改造をせずに電化を実現可能だ。

 また、バーナーからD2-ERTHに入れ替えることで、熱処理炉自体から発生するCO2を大幅に減らせる。これにより、「Scope1(燃料の使用や工業プロセスでの直接排出の温室効果ガス排出量)」の削減に貢献するとともに、CO2フリー電力を組み合わせて使用することで、「Scope2(他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量)」の増加を抑えられる。

「D<sup>2</sup>-ERTH」の実物写真 「D2-ERTH」の実物写真[クリックで拡大] 出所:大同特殊鋼

 同製品のヒーター容量は45kW/式(既存STC炉用ラジアントチューブバーナーと同等の出力)で、既存ラジアントチューブをそのまま流用でき、最小限の改造で電化が行える。さらに、バーナー排ガスが発生しないため、排ガスによる熱損失および窒素酸化物(NOx)の排出量をゼロに抑制できる。

 焼鈍処理工程における徐冷時のラジアントチューブ冷却機能も備えているため、ヒーター化に伴い冷却回路を追加する必要がない。加えて、ヒーター化によって、投入電流の精密な制御が可能なため、一般的なバーナー火炎制御と比較して炉内温度制御性を良化できる。

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