　同社は、これまでの金型用鋼で利用されていた化学成分を見直すことで、金型サイズの超大型化に対応するDHA-GIGAを開発した。同製品は、金型の焼入れ冷却工程において生じる粗大なベイナイト組織（靭性を低下させる針状組織）の発生を抑制し、一般的な熱間金型用鋼である「JIS SKD61 相当鋼」と比べて約4倍の焼入れ性を実現した。

連続冷却変態曲線（左）および冷却速度と靭性（右）［クリックで拡大］出所：大同特殊鋼

大型ブロック熱処理評価［クリックで拡大］出所：大同特殊鋼

　焼入れ性の向上により、大型の金型でも表層から中心部にかけて微細で良好な金属組織が得られ、高い靭性を確保できるため、鋳造使用中の割れを抑えられる。割れの抑制によって金型の補修や交換が減ることで、大型ダイカスト部品のトータルコスト低減に貢献する。

　同社は、ギガキャスト工法の適用が先行している中国で、無錫頂鋒日嘉金属制品（住友商事グループ）と連携しDHA-GIGAの在庫体制を整備する。さらに、DHA-GIGAを導入済みの同社大型熱処理設備と独自熱処理プロセスを活用し、ギガキャストのニーズに対応。また、国内では、大同特殊鋼の子会社である大同DMソリューションをはじめとした特約店各社と連携し、供給体制の整備を進めていく。

DHA-GIGA開発の背景

　現在、脱炭素社会の実現に向けて、自動車業界では電動化の取り組みが進められている。その一環として、走行距離の向上に貢献する部品軽量化やコスト低減に寄与する部品点数の削減などの取り組みが行われている他、自動車の車体部品をアルミニウム合金で一体鋳造するギガキャストの活用も推進されている。

　ギガキャストは、鉄素材を用いたプレス成形や溶接による従来工法と比較して、部品点数の削減および製造工程の簡素化、車体の軽量化や剛性向上を図ることができる技術として注目されている。

　一方、ギガキャストで用いられる超大型ダイカストマシン（型締力が6000トンを超えるような鋳造設備）は金型一式のサイズが巨大で、金型1ブロックのサイズも大きくなる。

　これまでのダイカスト製品の金型およびそのブロックサイズは、最大でも厚みが450mm以下で、重量は2.0トン以下となる。しかし、ギガキャスト工法では最大で厚みが650mm程度となり、重量2.0トン以上のものが使用される。ブロックサイズが大きくなると、従来の金型用鋼を使用した場合に焼入れ性不足が生じ、十分な素材性能を得ることが難しくなり、鋳造使用中の破損による金型寿命の低下につながる。

　そこで、大同特殊鋼は、ギガキャストによる金型サイズの大型化に対応できる素材の開発を進めてきた。

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