このような急速な拡大を支えるのが、活発な投資と、異業種企業の参入だ。中国におけるロボット産業の資金調達は、これまで政府主導による補助金が中心であると考えられていた。しかし実態を分析すると、政府系ファンドによる投資は全体の25%にとどまっている。残りの多くは民間資本であり、とりわけテック企業やメーカーをはじめとする産業系資本からの投資が活発化している。テック系ではMeituan(美団)やAlibaba(アリババ)、メーカー系ではXiaomi(シャオミ)やCATL(寧徳時代)などが、各ロボット企業に資金を投じている。
また投資にとどまらず、自動車、スマートフォン、家電など異業種からヒューマノイドロボット開発に乗り出し、市場へ参入する動きが相次いでいる。自動車企業のCHANGAN(長安汽車)や、電子機器メーカーのHONOR(栄耀)、家電大手のMidea(美的集団)などがその代表例だ。
Mideaは、家電市場での価格競争が激化するなか、自動化やロボット技術といった新規事業への多角化を模索してきた。同社は自動化生産分野で培った知見から研究開発をスタートさせ、2022年にドイツの産業用ロボットメーカーであるKUKAグループを買収。2025年12月には、世界初となる(同社による)6本腕の車輪型スーパーヒューマノイドロボット「Miro U」を公開した。これを洗濯機工場へ実証導入した結果、ライン切り替え効率の30%向上と設備設置面積40%低減を達成した。
HONORは、2025年に「5年間で100億ドルを投資し、世界をリードするAI端末エコシステム企業への転身」を宣言した。同社はスマートフォン開発で培った放熱技術を応用し、ロボットの関節部分の液冷放熱技術を開発した他、スマホ向け高性能バッテリーを応用することで、エネルギー密度を従来比40%向上させることに成功した。当面の間は、オフライン店舗でのスマート店員としての活用を進めるが、将来的に知性と感情を兼ね備えたロボットへと領域を拡大する狙いだ。
このような積極的な市場参入を背景に、中国国内でヒューマノイドロボット本体を手掛ける企業数は、2025年に前年比で倍増し約200社に達した。李氏の分析によると、現時点における世界全体のロボット本体企業数のうち、約半数を中国勢が占めるほどの規模になっているという。
中国のヒューマノイドロボット産業は、強固な産業チェーンと活発な投資をベースに、急速に市場を拡大させている。1年前のデータや状況と比較しても、その進化スピードの速さがうかがえる。
では、これほどまでに急増し進化したロボットたちは、実際の社会でどれほど通用するのだろうか。そして、圧倒的な物量とスピードで独走する中国に対し、日本はどのように立ち向かうべきなのか。続く後編では、ロボット基盤モデルを巡る各プレイヤーの戦略、そして日本が突きつけられている課題と巻き返しに向けた生存戦略について深掘りしていく。
黒船「フィジカルAI」襲来 日本におけるヒューマノイド開発の最適解とは
なぜフィジカルAIの象徴がヒューマノイドなのか@2025国際ロボット展
急成長中の中国ヒューマノイド大手AgiBotの技術戦略
中国最新ロボット事情〜勃興するヒューマノイド〜
ヒューマノイドとAMRが連携、山善が“未来の倉庫”デモ
中国ヒューマノイドの“爆速”実装、カギは「ロボットフレンドリー」な現場かCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
組み込み開発の記事ランキング
コーナーリンク