図4に示すように、特殊鋼には「機械構造用鋼」「工具鋼」「軸受鋼」などの種類があります。その名の通り、機械構造用鋼は機械構造に、工具鋼は工具に、軸受鋼は軸受に用いる特殊鋼となります。
ただし、特殊鋼はその用途に限定されるものではありません。あくまで「その用途に適した材料特性を持っている」と考えるべきであり、特殊鋼にはそれぞれ特徴的な材料特性があります。
例えば、工具には「硬さ」や「耐摩耗性(摩耗しにくい性質)」が要求されるため、工具鋼はその材料特性が付加されるように成分設計されています。特殊鋼を利用するに当たっては、各種特殊鋼がどのような成分で構成されており、どのような材料特性を有しているかを理解することが重要です。
特殊鋼は、複雑なプロセスを経て製造されます。最終製品(部品)になるまでのプロセスを簡単にまとめると、次のようになります。
(1)製鋼→(2)鋳造→(3)熱間加工→(4)二次加工→完成
プロセスの詳細を図で示すと、図5のようになります。基本的なプロセスは通常の鉄鋼材料のプロセスと同様ですが、随所に品質を高めるための技術が適用されます。
「製鋼工程」では電気炉で鉄スクラップを溶解したのち、「真空脱ガス」や「取鍋精錬」などの高度な精錬技術を用いて鋼中の不純物を除去していきます。このプロセスでは合金元素の添加も行われ、化学成分を調整します。鋼中に非金属介在物が作られないよう徹底的に管理され、完成した鋼は「鋳造工程」で冷やし固められます。
高合金の特殊鋼や最高品質の特殊鋼では、「特殊溶解技術」が適用されます。「VIM」は真空下で原料の溶解/精錬/鋳造を行える装置であり、清浄度の高いインゴットが得られます。「VAR」または「ESR」はインゴットを再溶解/精錬/凝固する装置であり、均質でより清浄度の高いインゴットを得ることができます。
「熱間加工工程」では鋳造した鋼に「圧延」または「鍛造」を施し、材料を鍛えていきます。有害な鋳造組織が破壊され、鋳造欠陥が圧着し、鋼が強靭な材質となります。
「二次加工工程」では鋼に「熱処理」や「機械加工」を施します。「熱処理」は機械加工の前後に行われ、最終熱処理で鋼の材質を調整します。その後機械加工され、最終製品(部品)に仕上がります。特殊鋼はこのようなプロセスを経て製造され、高性能な部品となります。
各種プロセスの方法について詳しく知りたい方は、連載第4回および第5回をご参照ください。熱処理については、連載第10回で解説をご覧いただけます。
ここでは代表的な特殊鋼について、日本産業規格(JIS)規定の品種と併せて解説します。工具鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼については次回以降の連載で解説します。
機械構造用鋼は、機械構造部品に適した材料特性を持つ特殊鋼です。熱処理によって高い「強度」と「靭性」を付加できるため、これらの材料特性が要求される自動車や機械などの部品に使用されます。被削性も良好で、扱いやすいメジャーな特殊鋼です。
機械構造用鋼には「炭素鋼系」のものと「合金鋼系」のものがあり、部品の大きさや要求される強度などに応じて使い分けられます。例えばボルトやナットなどの一般機械部品には炭素鋼系、歯車やシャフトなどの高負荷機械部品には合金鋼系といった感じで使用されます。
炭素鋼系の機械構造用鋼は、全27種がJISに規定されています。図6に示すように、主成分は炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)となり、各品種で炭素量が異なります。材料記号は「SxxC」および「SxxCK(xxの部分には数字が入る)」であり、SとCはそれぞれ「Steel(鋼)」と「Carbon(炭素)」を表しています。
また、材料記号の数字は「炭素量」を表しており(例えばS45Cは0.45%)、数字が大きい=炭素量が多いほど、強度が高い材料となります。機械構造用炭素鋼は「焼きならし」状態でも使用できますが、通常は「焼き入れ/焼き戻し」を施して高い強度と靭性を確保します。
ただし、炭素量が少ないものは焼き入れの効果が得られにくいため、主に浸炭処理を施して使用します。浸炭処理された材料は耐摩耗性に優れた表面を有し、内部は靭性に優れた材料となります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
素材/化学の記事ランキング
コーナーリンク