今なお工業材料の中心的な存在であり、幅広い用途で利用されている「鉄鋼材料」について一から解説する本連載。第11回は、特殊鋼について説明する。
現代の機器には「特殊鋼(とくしゅこう)」が多く使用されています。特殊鋼は、普通の鋼(はがね)をしのぐ材料特性を持つハイテクな材料として知られています。機器メーカーが高度な製品を作ろうとするとき、特殊鋼がその実現をサポートしています。例えば自動車では、特殊鋼が自動車の高出力化、軽量化、安全性能向上を支えています。
特殊鋼は鉄鋼材料の“究極版”と言え、特に日本は特殊鋼の製造に強みがあります。この国には優れた特殊鋼メーカーがいくつもあり、日本で作られた特殊鋼の品質の高さや優れた材料特性は世界で認められています。近年は特殊鋼が機器の長寿命化やメンテナンスフリー化に貢献し、脱炭素化に対しても寄与していることから、その重要度は図り知れません。
そこで今回は、特殊鋼について一から解説します。特殊鋼と普通鋼の違いや特殊鋼の種類、製法について触れ、各種特殊鋼がどのような材料特性を有するかについても解説していきます。
いま一度「鋼」について整理すると、鋼は炭素を0.02〜約2%含む鉄鋼材料です。炭素量に応じて強度や硬さを調整することが可能で、また加工しやすいことから、モノづくりにおいて広く利用されています。
連載第3回で説明したように、鋼は成分の違いによって大きく「炭素鋼」と「合金鋼」に分けられます。これらの違いは合金元素を含むかどうかであり、鋼の材質を選定するときはこの分類が重要となります。
一方、鋼を性質によって分類すると「普通鋼」と「特殊鋼」に分けることができます。鋼には多種多様な性質の鋼が存在するため、欲しい性質や汎用性の観点で鋼を選択するときはこの分類が役に立ちます。
「普通鋼」はその名の通り「普通の性質を持つ鋼」です。炭素鋼が主体であり、特別な合金元素を含まず、基本的に熱処理しないで使用できます。汎用性が高く、安価に入手することができます。
普通鋼はそれほど強度を必要としない場所や、高度な品質が要求されない場所などに使用されます。例えば建材を大量に必要とする建築/土木分野では、普通鋼が活用されています。
一方の「特殊鋼」は「特殊な性質を持つ鋼」です。ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)などの特別な合金元素を含んでおり、これらの元素によって「機械的特性」「化学的特性」「磁気的特性」などが鋼に付加されています。
特殊鋼は特殊な製法で製造されており、モノによっては不純物や非金属介在物の大幅な低減が図られています。高い品質を有するため、そのぶん高価となります。希望の材料特性を引き出すために、基本的に熱処理して使用します。
特殊鋼は、特殊な環境下でその性能を発揮します。例えば、高温環境下、低温環境下あるいは腐食環境下は特殊鋼の得意分野であり、普通鋼では耐えられないような厳しい環境下でも性能を維持します。このことから特殊鋼は「高機能材料」の側面があります。
実際に特殊鋼はさまざまな場所で使用されています。分野としては輸送機器、発電機器、厨房機器、船舶、航空機、産業機械、工作機械、医療器具などが挙げられます。例えば、自動車ではエンジン部品、駆動部品、足回り部品など多くの部品に使用されており、自動車の走行性能を支えています。
近年の機器は部品にかかる負荷や使用環境が過酷になっており、材料には高い性能が求められています。これに応えるように、メーカーの努力によって特殊鋼の性能も向上してきています。脱炭素化の要求にも応えるため、製造時のCO2排出量を抑えた商品や、熱処理を不要とした商品などが展開されています。
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