マテリアル領域の競争力の源泉は、単一の製品や設備の規模だけではない。工藤氏は、旭化成が100年以上の歴史で蓄積してきた技術、生産ノウハウ、知財、そしてデジタル人材といった「無形資産」を有機的に結び付ける「エコシステム」に言及した。
旭化成では、事業領域の垣根を越えた技術の横断的活用が日常的に行われている。例えば、マテリアル領域で長年培われてきた「ポリマー設計技術」は、ヘルスケア領域の「ウイルス除去フィルター」における微細な孔径制御技術の開発で応用され、国内外で競争力を生み出している。逆に、ヘルスケア領域で培われた厳格な生産設備の自動化技術や運用ノウハウがマテリアル領域の工場に展開され、品質と生産性の向上に貢献している。
このエコシステムを支えているのがデジタル技術とAIだ。現場のベテランに蓄積された「暗黙知」をデジタル技術によって「形式知化」し、全社で共有する基盤が整備されている。既に全社共通の生成AI基盤「Smart Text Hub」を通じて、マテリアル領域における「顧客対応のQ&A処理」「工場建設関連での活用」のノウハウを、ヘルスケア領域と住宅領域に共有し、業務の効率化を図っている。
「顧客対応のQ&A処理」では、過去のメールのやりとりを構造化して生成AIのデータソース化するノウハウを、ライフサイエンス領域の顧客対応へ横展開している。
「工場建設関連での活用」では、基準類のデータ処理やデータ管理に関するノウハウを、建材開発の技術資料や住宅設計基準のQ&Aの生成AI活用へ横展開している。
現在は、AIエージェントが各領域のデータをつなぎ、意思決定のスピードと再現性を高める構想も描いている。この構想では、AIエージェントにより、データに基づき研究開発や製造、需給の意思決定を高度化するとともに、領域を横断したデータの活用により意思決定を支援し、成功確率と再現性を高めることをイメージしている。
さらに、マテリアル領域で培った無形資産を社内にとどめず、積極的に外部へ展開する「ライセンス型領域」も新たな収益源として育成されている。ライセンス型領域では、電池材料や電材などの技術供与だけでなく、デジタル技術やマテリアルズインフォマティクス(MI)の社外展開も進めている。2025年度には既に6件のライセンス契約を締結した。
2025〜2027年度における3年間累計の新規ライセンス契約締結目標として10件を掲げている。ライセンス型領域では2030年までに累積利益貢献額100億円以上を目指している。
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