旭化成のマテリアル領域が転換点を迎えている。国内ナフサクラッカーの統廃合を進め基礎化学品を縮小する一方、AI半導体向け材料や蓄電池など高付加価値分野へシフト。中東情勢の悪化による原料高騰という逆風の中、同社はいかにして成長軌道を描くのか。
旭化成は2026年4月15日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、2025〜2027年度を対象とした「中期経営計画2027〜Trailblaze Together〜(以下、中計2027)」の進捗状況を発表した。
2021年度における旭化成の利益構成比は、ヘルスケア領域が23%、住宅領域が32%、マテリアル領域が46%を占め、利益をけん引しているのはマテリアル領域だった。しかし、2025年度の利益構成比は、ヘルスケア領域が33%、住宅領域が39%、マテリアル領域が28%となった。
旭化成 代表取締役社長 兼 社長執行役員の工藤幸四郎氏は「2021年度の利益構成比は当社がマテリアル領域中心の総合化学メーカーであることを示している。その後、マテリアル領域が環境の変化を受け、構造転換に注力した。一方、住宅領域やヘルスケア領域はこれまでの投資が結実し、順調に成長してきた。その結果として、2025年度においては、住宅領域が最も利益を稼ぐ領域となった」と触れた。
同社は「Diversity×Specialtyの進化」をテーマに掲げ、マテリアルを中心とした領域構成から、多様な産業に向けた高付加価値事業が高い水準の利益貢献をもたらす構造への変革を進めている。これにより、2030年度の利益構成比では、ヘルスケア領域が34%、住宅領域が36%、マテリアル領域が30%と、各領域がほぼ同水準の利益になることを目指している。
現在進行中の中計2027では基本方針として、「投資成果創出による利益成長」「構造転換や生産性向上による資本効率改善」「Diversity×Specialtyの進化」を掲げる。2027年度に営業利益2700億円、のれん償却前営業利益3060億円、ROIC(投下資本利益率)6%、ROE(自己資本利益率)9%を目指す。2030年度には営業利益3800億円、ROIC(投下資本利益率)8.0%以上、ROE12.0%以上を掲げている。
中計2027において、構造転換のメインターゲットはマテリアル領域だ。マテリアル領域全体の売上高のうち約20%を占める領域で構造転換を推進している。構造転換の中心となるのが、マテリアル領域全体の売上高のうち約10%を占めるケミカル事業だ。
2025年度において、旭化成は同年6月にMMAなどの領域撤退、同年12月にヘキサメチレンジアミンの生産を終了し、2026年1月に三菱ケミカル旭化成エチレン(AMEC)水島工場(岡山県倉敷市)のエチレン設備停止といった売上規模(概算値)350億円の構造改革を進めてきた。
加えて、ケミカル事業以外の分野でも2025年12月に商社機能の経営統合や鉛蓄電池用セパレータ領域の譲渡、2026年3月にUVC LED領域の終了と、売上規模900億円の構造改革を行った。今後も残りの構造改革が順次実行に移される予定だ。
今後の構造改革に関連する動きとして注目されるのが、国内のナフサクラッカー(エチレン製造設備)に関する業界再編だ。工藤氏は石油化学工業協会のデータを引き合いに出し、「国内ナフサクラッカーの稼働率が既に長期間にわたり80%を下回る状況にあった」と話す。
中国の化学メーカーによる石油化学基礎製品の大増産などに伴い、安価な石油化学基礎製品の市場流入が国外で進み、国内化学メーカーが生産する石油化学基礎製品の輸出競争力が失われる中、国内製造設備の過剰な生産能力が課題となっている。
この課題を解消する手段の1つとして旭化成は、三菱ケミカル、三井化学と連携し、西日本(大阪/水島地区)のナフサクラッカーを統合するという基本契約を締結した。2030年近傍をめどに、AMEC水島工場のエチレン製造設備を停止し、大阪石油化学(OPC)のエチレン製造設備(大阪府高石市)へ集約する。
こうした取り組みをさらに進めることにより、旭化成のエッセンシャルケミカル領域の売上規模は、2030年頃には旭化成全体の数%程度にまで縮小する見通しだ。
しかし、工藤氏は「石油化学基礎製品の安定供給は日本の経済安全保障に関わる問題だ」と指摘する。そのため、同社は石油化学基礎製品の生産規模を縮小しつつも、サプライチェーン上で重要性の高い製品については安定供給の責任を果たし、残存するプラントの稼働率を高めることでコスト競争力を回復させ、日本の石油化学産業全体の強靭化に貢献する考えだ。
また、バイオ原料の展開も進めている。バイオエタノールを原料とする独自のオレフィン製造技術「Revolefin(レボレフィン)」は、既存設備を活用しながらグリーン化を実現できるグローバル展開可能な技術として期待されている。同社は実証を進めた上で、統合後の大阪の設備での商業化や、ライセンス型ビジネスとしての海外展開も視野に入れている。
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