旭化成は中期経営計画説明会で、緊迫化する中東情勢が事業に与える影響について見解を示した。イラン情勢などを背景にナフサ価格は倍近くに高騰しており、川上の石化事業を中心に価格転嫁が急務となっている。旭化成への影響や現状とは――。
旭化成は2026年4月15日、東京都内で開催した中期経営説明会で、米国とイスラエルのイランへの攻撃に伴う中東情勢悪化による同社への影響や現状を説明した。
旭化成 代表取締役社長 兼 社長執行役員の工藤幸四郎氏は「当社は、ナフサクラッカー(エチレンプラント)によりナフサを約800〜900℃の高温で熱分解し、エチレンを製造する事業や、そのエチレンをはじめ石油化学基礎製品を利用する住宅事業を展開している。エチレンの製造事業では、2026年2月末に米国とイスラエルがイランに攻撃を開始して以降、官民で協力しナフサの調達を推進している。旭化成と三菱ケミカルの合弁会社である三菱ケミカル旭化成エチレン(AMEC)のナフサクラッカー(岡山県倉敷市)は2026年6月中旬までは稼働のめどが立っており、エチレンを生産できる見通しだ。そのため、国内企業は6月中旬〜末ぐらいまでは国産のエチレンを調達できると考えている」と話す。
その上で、「エチレンを利用する川中や川下の産業に貢献するという使命の下、今までナフサを調達し、エチレンの生産を行ってきた。こうした活動が評価されている他、互いの製品生産量を落とさないために、現在調達可能な(以前より)価格が高いナフサを基にナフサクラッカーで生産したエチレンの価格アップも顧客が受け入れてくれる状況だ。残念ながら、ナフサ価格の値上がりは従来比で5〜10%増というレベルではなく2倍近くになっており、顧客にもサプライチェーンがどのようになっているかということをきめ細かく説明しながら、必要な場合は値上げをお願いしている」と補足した。
イランによるホルムズ海峡封鎖などに伴い、中東からナフサの調達が難しくなっていることを踏まえて、同社はナフサの調達先の多角化も進めている。
一方、今回の中東情勢悪化が生じる以前から、国内のナフサクラッカーの稼働率は低く、石油化学基礎製品の生産量は落ちていたという。
工藤氏は「石油化学工業協会が発表しているが、既にかなりの期間にわたり、国内のナフサクラッカーの稼働率は80%を割っていた。つまり、最低の稼働率に近い水準にあったわけだ。従って、この中東問題が起こる以前からナフサクラッカーの稼働率は低かった。中東からナフサの調達が難しくなっている現状でも、ナフサクラッカーの稼働率自体は少し低下するぐらいで推移している。ナフサクラッカーの稼働率が低いということ自体が問題だと考えている」と述べた。
加えて、「この問題は日本の経済安全保障に関わるため解決すべきだ。その手段の1つとして、当社、三菱ケミカル、三井化学が組んで、大阪府と岡山県で有しているナフサクラッカーの集約を進めている。既に、国内に12基あるナフサクラッカーのうち4基の稼働を2030年前後に停止する予定を発表している。必然的にこのナフサクラッカーで生産されるエチレンを基に製造される誘導品(中間製品)の工場も統合や閉鎖していく。これにより(余剰となっている設備やコストを減らし)、残るナフサクラッカーや誘導品工場の稼働率を高め、国内における石油化学基礎製品の製造事業を強い産業としていく」とコメントした。
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