それでは、毛玉取り機の仕組みについて説明します。
毛玉取り機の基本原理は、電動シェーバーとほぼ同様です。メッシュ状のカッターカバーの穴に入ってきた毛玉が、高速で回転するカッターとカッターカバーの縁との間に挟まり、せん断されることで除去されます(図6左)。
3枚の刃は、回転時のバランス(遠心力の偏り)を考慮して等間隔に配置されています。また、刃の裏側にはスプリングが組み込まれており、負荷がかかった際には刃がへこみ、負荷がなくなると元に戻る構造になっています(図6右)。これにより、使用中の不快な振動や引っ掛かりを抑え、スムーズな毛玉の除去が可能となります。
カッターの回転に伴い、その背後に配置されたファンが空気の流れ(気流)を生み出します。このとき本体内部には負圧が発生し、カッターで除去された毛玉は吸い込まれるようにしてダストケースへと移動します(図7)。
つまり、カッターの回転エネルギーをそのままファンを回転させる力として活用することで、毛玉の回収機構を別途設けることなく実現しています。重力に頼らず、回転動力を効率的に使い回す、一石二鳥の設計といえます。
パンチングメタルが施されたカッターカバーは、ネジ式で、本体にねじ込むように取り付ける構造となっています。この構造により、通常使用時には外れにくく、安全性が確保されています。
一方、メンテナンス性も考えられており、カッターカバーを外すと、カッター部やファンを取り外すことができるため、本体を完全に分解しなくても内部を容易に清掃することが可能です。
今回、100円均一で入手した毛玉取り機は、決して最新の技術を駆使した製品ではありません。しかし、価格という絶対的な制約条件の中で、機能を損なうことなく成立させるための「設計の引き算」が徹底されていることが分かりました。
普段、過剰なスペックや複雑な設計に頭を悩ませがちな筆者にとって、このシンプルな製品は、「設計の本質とは何か」をあらためて考えさせてくれました。皆さんはどのように感じられたでしょうか。 (次回へ続く)
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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