発表会では、この学習プロセスを可視化するデモンストレーションを披露した。ピッキングステーションを模した環境で、コンテナ内のぬいぐるみを移し替える作業を実演した。
まず初めに、VRゴーグルを装着したオペレーターがロボットと動きをリンクさせ、実際にぬいぐるみをつかんで移し替える動作をシステムに学習させた。その後、取得した学習データを基に、今度はヒューマノイドロボット自身が自律的に対象物を認識し、ぬいぐるみを移し替えた。
実用レベルの自律動作を可能にする「良質なデータ」を収集するためには、手本となる人間側の動作にも一定のルールが必要になるという。例えば、対象物をしっかりとつかむことや、移動の際はコンテナや箱の淵から10cmほどの高さを維持するといった具体的な動作条件を設けている。
発表会では、運営委員として参画する山善、ツムラ、レオン自動機からそれぞれの現場が抱える課題とヒューマノイドロボットへの期待が語られた。
山善は、部材調達から製造ラインの自動化までを手掛けており、近年は協働ロボットや自動搬送ロボットなどを絡めたソリューション提供を拡大している。一方で、既存の産業用ロボットは活用場所や対象作業が制限され、専用技術が必要だった。運営委員長を務める山善中山氏は、「3000社の仕入れ先を持つ山善のネットワークを使って高品質なデータ収集に貢献したい。現場で使えるヒューマノイドロボットを産業界に先立って供給し、ものづくり日本の復権を目指す」と意気込みを語った。
ツムラは医療用漢方製剤事業で国内約1600億円の売り上げがある。漢方需要の増大と生産年齢人口の減少の中、既に製造全工程で自動化設備や産業用ロボットを導入している。一方で既存ラインのレイアウト制約などをヒューマノイドロボットで解消したいと以前から検討を重ねており、早期実用化を目的にコンソーシアムへの参画を決めたという。2027年以降のテスト導入も見据えている。ツムラ 執行役員 生産本部長の熊谷昇一氏は、「労働生産性の向上に加え、ロボットにセンサーを搭載することで、人間の経験や勘といった暗黙知の可視化にもつながると見込んでいる。現場に入れて初めて分かることもあるため、まずは実践していくことが重要だ」と期待を寄せた。
食品加工機械メーカーとして国内外で事業を展開するレオン自動機は、機械化が進んでいるものの、依然として人間が介在する工程が多く残っているという。スピードに優れるが固定化されがちな産業用ロボットに対し、現状の属人的な作業をヒューマノイドロボットへ代替させる構想を描いており、山善からの呼びかけに応じて参画を決断した。レオン自動機 常務執行役員生産本部長兼ロボット事業担当の堺義孝氏は、「食品を扱う上での衛生面など乗り越えるべきハードルはあるが、今まさにスタート台に立ったところだ。参画企業と連携しながら検証を推進していきたい」と語った。
J-HRTIの今後のロードマップとしては、2026年度に単純タスクの代替を中心とした社会実装を開始する。2027年度には各現場での導入実績の積み上げを図り、2028年度には拡大普及期を見据えて展開していく方針である。
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