三菱電機は、ドイツのアーヘン工科大学と共同で、工作機械の加工誤差をリアルタイムに補正する技術を開発した。CNC装置上で動作するデジタルツインを用いており、同技術を実装した工作機械において、構造部の変形によって生じる加工誤差を最大で50%低減できることを確認したという。
三菱電機は2026年3月25日、工作機械の加工誤差をリアルタイムに補正する技術を開発したと発表した。ドイツのアーヘン工科大学と共同で開発した。CNC装置上で動作するデジタルツインを用いており、同技術を実装した工作機械において、構造部の変形によって生じる加工誤差を最大で50%低減できることを確認したという。
機械加工分野では、切削力によって生じる工作機械の変形や工具摩耗、温度変化、加工対象のばらつきなどが原因で加工精度が低下し、不良品の発生や生産効率の低下につながることが課題となっている。その解決策として、現場で取得したデータと、工作機械および切削加工の物理モデルを組み合わせて、コンピュータ上で加工状態をリアルタイムに再現、推定するデジタルツイン技術が注目されている。
だが、デジタルツインの推定結果をリアルタイムで制御に反映するためには、工作機械のセンサーや制御装置からの膨大なデータの取得、高精度な加工誤差推定モデルの構築、誤差を補正するリアルタイム制御を同時に実現する必要がある。工作機械に内蔵されるCNCは処理能力やメモリ容量に制約があるため、データ選別などの機能を備えた高精度なモデルを搭載することが難しく、デジタルツインを用いたリアルタイム制御を実現する上での課題となっていた。
そこで今回は、軸位置や電流、切削力などの膨大なデータを高いサンプリングレートで取得し、その中から加工誤差推定に必要な情報のみを精緻に抽出して、最小限の計算式で構成したコンパクトな物理モデルを組み込む独自の設計手法を採用した。これにより、CNC上でのリアルタイム動作を実現することに成功した。アーヘン工科大学が保有する三菱電機製CNCを搭載した検証用工作機械を用いた実験では、構造部の変形によって生じる加工誤差を最大で50%低減できることを確認した。
工作機械の軸位置やモーター電流などの制御情報と切削力などのセンサー情報を、時間同期させた上で高いサンプリングレート(センサーや計測装置が1秒間に何回データを取得するかを表す指標)で高速取得するために、三菱電機独自のエッジデバイスで、ユーザーが開発した個別機能を実装することが可能な高速処理ユニットをCNCに搭載した。これにより、加工誤差推定に必要なデータのみを精緻に抽出できるようになった。
三菱電機とアーヘン工科大学が連携し、抽出データから工作機械と切削加工の物理モデルを開発した。同モデルは最小限の計算式に簡略化したコンパクトモデルとして設計することで、高速処理ユニット上での高精度かつリアルタイムの動作を実現した。
また、工作機械に力が加わることで発生する構造部の変形に起因する加工誤差を、リアルタイムで推定し、補正するアルゴリズムを構築した。推定した加工誤差を基にCNCへの補正量を計算し、リアルタイムで指令するシステムを設けた。これにより、デジタルツインのシミュレーション結果を現実の工作機械の制御に即時反映することが可能となった。
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