本連載では、工作機械史上最大の発明といわれるCNCの歴史をひもとくことで、今後のCNCと工作機械の発展の方向性を考察する。今回は、CNCが誕生した時代を振り返り説明する。
連載第2回の今回は、数値制御装置に基本機能が備わり、CNCが誕生した時代について紹介する。まず、図1にCNC発展の年表を示す(第1回に続き再掲)。これは70年近くに渡る歴史を3つの時期に分けて記載をしている。
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今回は第1期である1956年〜1974年の期間について説明する。初期の数値制御はNCと呼ばれていたが、これが発展して第1期の最後にはコンピュータを用いた数値制御に変わり、CNCが誕生した。この一連の発展の経緯を紹介したいと思う。
工作機械を自動化する数値制御装置が世の中に初めて登場したのはいつなのだろうか。1952年に米国のMIT(マサチューセッツ工科大学、Massachusetts Institute of Technology)が、NCフライス盤の試作機を作り、公開したのが始まりといわれている。
日本国内では、MITの試作機に影響を受けた当時の富士通(部門が独立して現ファナック)が開発に着手し、富士通が所有していたタレットパンチプレスにNC装置を接続した機械を1956年に発表した(図2)。
現在では一般的な半導体素子が当時は無かったため、このNCではパラメトロンという珍しい素子を用いて演算処理を行っていた。また、単純なプレス機であり制御は簡単なものであったが、それでも数値制御を用いて動いたことにより、その後のNCの開発に弾みがついたといわれている。本稿の年表では、国内で初めてとなるこのNC装置が登場した1956年を第1期の始まりと定めている。
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