第1期の数値制御装置において、最も注目すべきポイントが演算デバイスの発展である。ここで言う演算デバイスとは、NC装置において数値演算の実現に使用していたデバイスのことを指している。
先に述べた通り、国内初のNCの演算機構にはパラメロトン素子を用いていたが、時代と共に真空管、トランジスタ、IC(集積回路)の採用へと変化していく。これもファナックの例であるが、真空管を用いたNC装置には2000本の真空管が使われていたという。これがトランジスタを用いたNC装置では制御ボード300枚に収めることが可能となった。それがその後のICを用いたNC装置では制御ボード40枚で構成できるようになったという。
このように、半導体素子の進化がNC装置の実用化に大きく寄与していたと思われる。図6にICを演算デバイスとして採用したファナックのNC装置を示す。それまでに比べて大きく削減されているのだが、それでもNC装置内に多くの制御ボードが使用されていることが見てとれるだろう。
ここまでのNCの演算機構は、デバイス自体のハードウェア回路によってその論理演算処理を実現していたものであり、ハードワイヤードNCとも呼ばれている。
つまり、全ての演算回路はあらかじめ設計され、その設計に基づき制御ボードを製作していた。そのため、制御ボードを製作した後に回路を変更するということは不可能であった。
これを大きく変えたのが、数値制御装置へのコンピュータの採用である。この場合、例えば演算デバイスにはマイクロプロセッサなどを使用する。機械語(アセンブリ)で記述された制御プログラムをマイクロプロセッサに書き込み、ソフトウェア回路が数値制御の処理を実施するというものである。
制御プログラムを書き換えることにより、ソフトウェア回路の変更を可能としたことが画期的な進化といえるだろう。このようなコンピュータによる数値制御をCNCと呼んでおり、マイクロプロセッサの搭載によりCNCが誕生したのである。
図7にマイクロプロセッサを搭載したCNCの制御ボードを示す。残念ながらこれはCNCが誕生した当時のものではなく、近年の制御ボードである。当時のCNCの制御ボードはもはや資料として入手することが困難でありご容赦いただきたい。
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