旅客船の「レベル4相当」自律運航の実力は? 操船ブリッジかぶりつきレポートイマドキのフナデジ!(12)(3/3 ページ)

» 2026年03月10日 08時00分 公開
[長浜和也MONOist]
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電車でいうところの「運転席直後の窓」から自律運航を目撃

離桟

 旅客船において、航空機で言うところの離陸に当たるのが出港、もしくは(桟橋を離れる、で)離桟だ。この離桟は航空機の離陸と同様に難しい。さらに、旅客船による離桟から低速域にかけての操船は「静かに回頭する」「船客に不快感を与えない」ことを重視する。急な回頭で“操船の上手さ”を見せるのではなく、外から見て気付きにくいほど穏やかな変針を良しとする旅客船の独自の快適性を自律運航における操船でも制御目標としているという。

「おりんぴあどりーむせと」の準姉妹船「おりんぴあどりーむ」のブリッジ右舷側後ろ 「おりんぴあどりーむせと」の準姉妹船「おりんぴあどりーむ」のブリッジ右舷側後ろ。このように内部をブリッジ外から見られるようになっている。おりんぴあどりーむせとでは、この部分に自律運航システム用コンソールを追加していたので、自律運航の状況を“つぶさ”に観察できた[クリックで拡大]

 ブリッジで交わされるスタッフ間の会話や説明からは、風の影響はセンサー(風向風速計)だけでなく船体の動きからも推定するなど、外力の扱いは単純な「センサー入力」ではないことも示唆している。また、危険な場合には「危ないと思ったらキャプテンのコントロール」というように船長もしくは航海士が手動で操船に介入できるようにしている。

「おりんぴあどりーむせと」が自律運航で新岡山港を離桟した直後の状況 「おりんぴあどりーむせと」が自律運航で新岡山港を離桟した直後の状況[クリックで拡大]
離桟後、手動モードで180度回頭して船首を沖に向けた後、改めて自律運航モードに移行する 離桟後、手動モードで180度回頭して船首を沖に向けた後、改めて自律運航モードに移行する。このとき、MEGURI2040技術員が船長にモード切替を進言、船長の了承を得てプランナーをモード移行画面に遷移させて自律運航モードに移行した[クリックで拡大]
意図せず、左舷前方から入港する船が接近してきた 意図せず、左舷前方から入港する船が接近してきた。リスクとして評価したプランナーは画面にアラートを発出している[クリックで拡大]

避航

 避航操船では、回避ルートをプランナーが計画し、そのルートが水深/制限条件/船舶性能を満たすかをAPUが検証し、承認したルートに基づき舵/推進器をDTCが制御する、という3層で自律運航の操船を実行する。ここで重要なのが、回避ルートを“立案”する機能と、“評価する”機能を分離している点だ。

 実証デモにおける避航操船は、おりんぴあどりーむせとの前方に停泊させたタグボートに対して、事前に設定した航路から右に変針して避航する想定で実施した。おりんぴあどりーむせとの予定航路で停止しているタグボートをリスク要因と認識して避航航路を生成し、その航路をAPUが安全と評価するとDTCが作動して、おりんぴあどりーむせとを生成した避航航路を航行するように舵や推進器を制御する。この避航によってタグボートのリスクがなくなった時点で元の予定航路に復帰する状況が示された。

予定航路上に停止していたタグボートをリスクとして評価 予定航路上に停止していたタグボートをリスクとして評価したシステムは、DTCによって減速した後、舵を右に切って追い越していった。コンソールの前に船長が立直(りっち)しているが、コンソールには手を触れていない[クリックで拡大]

 このとき、プランナーの画面上で青が予定航路、橙が避航航路として示され、停止中のタグボートを「対象物」として設定し、衝突リスクを感知した上で「減速+変針」を組み合わせた避航航路を航行していることが視覚的にも確認できた。

着桟

 着桟デモは、出港(離桟)した新岡山港で行った。着桟直前の海域には東側(着桟する船から見ると進行方向右舷側)から港のすぐ東側に河口がある百間川が流れ込んでくるため、難易度の高いアプローチとなる。ブリッジから見ても、桟橋の直前で海面の潮目がくっきりと認識できるほどだ。そのため、複雑な潮流を舵と推力で“いなし”ながら船を桟橋に着けるといった複雑で“臨機応変”な操船が求められる。

 MEGURI2040の技術スタッフが「人間のキャプテンがやった方が早いのは早い」と述べる通りに、自律操船では3〜4ノットでゆっくり近づくというアプローチをとっており、速さよりも慎重さを優先していた。効率重視だと自律操船の方が速くてうまいことを期待してしまうかもしれないが、船の場合はとにかく安全を重視することを優先する。

 DTCによる操船制御としては、主機関とスラスターを使って徐々に寄せ、船尾側をわずかに右へ振りながら、最終の着桟位置に合わせて船体を平行へ持ち込めるところまでDTCが制御して所定位置まで到達した。この日の実証デモは「(船に慣れていない報道関係者の安全に配慮して)係船索が届くところまで自動でもっていく」としていたため、着桟となる手前の所定位置で終了している。

新岡山港への自律着桟直前 新岡山港への自律着桟直前、操舵室では複数の表示画面を前に技術スタッフが航行状況を監視する。正面の窓越しには桟橋と岸壁が迫り、主機とスラスター制御を統合するDTCの操船出力と航行計画表示を確認しながら、慎重なアプローチが続けられていた[クリックで拡大]
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