貿易立国日本を支える自動車船の最新ブリッジを「セレステ・エース」で見た!イマドキのフナデジ!(7)(1/3 ページ)

「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第7回は、商船三井の最新鋭自動車船「セレステ・エース」のブリッジを紹介する。

» 2025年10月14日 06時00分 公開
[長浜和也MONOist]

貿易立国ニッポンを支える船といえば?

タンカー!

うん、そうだね。


 日本で長年輸入第1位の原油を運ぶタンカーはなくてはならない存在だ。そして、輸入するものがあれば輸出するものもある。

 日本で長らく輸出品目第1位となっているのが自動車。その自動車を運ぶ自動車船(PCTC:Pure Car and Truck Carrier。なぜか自動車運搬船とは呼ばないね。あー、船に運搬するものという意味もあるからかー)も貿易立国ニッポンにとってなくてならない存在だ。

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LNG燃料自動車船の新系列「BLUEシリーズ」の3番船

 日本の自動車船フリートの一角を担う商船三井(MOL)の自動車船事業では、最新型でLNG燃料の本格導入を進めている。2023年にシリーズ名と新塗装を公表したLNG(液化天然ガス)燃料自動車船の新系列「BLUEシリーズ」は、2024年の「CERULEAN ACE」引き渡し以降、順次就航を重ねている。MOLは2024〜2025年に日本建造の同系列を中心に14隻のLNG燃料自動車船を運用する計画を示している。

商船三井の最新鋭自動車船「BLUEシリーズ」の3番船となる「セレステ・エース」 商船三井の最新鋭自動車船「BLUEシリーズ」の3番船となる「セレステ・エース」[クリックで拡大]

 BLUEシリーズの基本思想は、環境負荷低減と運航効率の同時追求にある。船型の広幅化(従来の32m級から38mへ)によって搭載台数の増加(従来の6400台から7000台へ)に加え、船首上縁を面取りした「エアロダイナミクスデザイン」の採用で風圧抵抗を約20%低減した。これにより、正面と側面で受ける風の影響を抑える船型の最適化が図られている。

 燃料面では、主燃料にLNGを採用し、重油燃料船と比べてCO2を約25〜30%、SOxを約98%、NOxを約85%低減できる。BLUEシリーズでは大容量LNGタンクを2基備えることで「LNGのみで1カ月連続運航が可能」と訴求する。

 主機はLNGデュアルフューエルのMAN 6S60ME-C10.5-GI系を搭載する。1軸プロペラの推進効率向上に関しても、MOLでは「プロペラ・ボス・キャップ・フィン」(PBCF)などの省エネ技術の開発を長年展開しており、ハブ渦の低減により燃費3〜5%低減の効果を示している。

 今回取り上げる「セレステ・エース」はBLUEシリーズの3番船で、2024年9月12日に建造していた新来島ドックから商船三井に引き渡された。全長(LOA)が199.960mで、型幅が38m。7万3132総トンで載貨重量トンが1万9914t。自動車積載能力は7169台とされている(Class NK表記から)。

 ブリッジは、運航に必要な装置を機能ごとに配置することで、操作や監視の“流れ”がスムーズになっている。本記事では、一般公開(2025年7月21日に開催された「海の日記念行事2025」)で確認できたブリッジのコンソールやディスプレイ表示からそれらの役割と機能を解説することで、最新自動車船ブリッジの「運航システムの司令塔」としての機能を紹介していく。

最上甲板にブリッジがちょこんと載っているように見えるが…… 最上甲板にブリッジがちょこんと載っているように見えるが……[クリックで拡大]
実際に間近で見ると全幅にわたる長大なブリッジに圧倒される 実際に間近で見ると全幅にわたる長大なブリッジに圧倒される[クリックで拡大]
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