富士通ではGeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPにより、半導体表面固液界面における2万6712原子の5ナノ秒のMDシミュレーションを3日間で完了している他、全固体電池固体電解質(固固)界面における12万7296原子の10ナノ秒のMDシミュレーションを約7日間で完遂している。
なお、公開されている事前学習済みモデルを用いたNNPでは、1ナノ秒間における1344原子の動きをMDシミュレーションするためには46時間かかるだけでなく、界面構造が崩壊し、空隙が発生する。一方、GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPでは、1ナノ秒間における1344原子の動きをMDシミュレーションする時間が1.5時間と短く、界面構造も崩壊しないことも分かった。
同社では、全固体電池の固固界面や燃料電池の高分子電解質膜、半導体表面ウェットエッチング(固液界面)、半導体表面ドライエッチング(固気界面)における、GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPを用いたMDシミュレーションの効果について調べた。
全固体電池の固固界面の動きに関して、従来のMDシミュレーションで再現した場合、化学反応が起きないだけでなく、固体電解質界面層(SEI)が形成されず、正しい分析が行えなかった。量子化学計算を用いたMDシミュレーションでは、化学反応は起きたが、SEIが不明瞭で正しい分析はできなかった。量子化学計算を用いたMDシミュレーションは、10万原子超の計算時間が1000億年以上だと見積もられている。
GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPを用いたMDシミュレーションでは、SEIが形成され、正しい分析/施策検証が可能だと分かった。
燃料電池の高分子電解質膜を対象に、GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPにより、2万原子系で30ナノ秒以上のMDシミュレーションを行った結果、8日間の計算時間で実現することが判明した。
半導体表面のウェットエッチングに対しては、GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPを用いたMDシミュレーションを行った。その結果、実験では観測が難しいエッチング過程の評価/解析が可能になると明らかになった。
半導体表面のドライエッチングを対象に、GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPを用いたMDシミュレーションを実施した結果、実験では観測が困難なエッチング過程の評価/解析が可能だと分かった。
また、GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPの推論速度は、2つの公開NNPより約100〜200倍速いことも分かっている。既にGeNNIP4MDを試験的に採用している企業もあるという。「評価も高く継続的に利用されている。今後は、GeNNIP4MDの導入に伴走する人材やコンサルティングを強化し、導入先が使いこなせるようにサポートしていく見通しだ」(溝渕氏)。
今後も、同社ではさまざまな製品を対象に、GeNNIP4MDで生成した訓練済みNNPを用いたMDシミュレーションの適用実績を拡大していく方針だ。坂井氏は「全固体電池だけでなく、半導体の表面/界面なども対象となる。当社では、顧客がR&Dで目指すのは、『材料の開発期間を短縮したい、新しい材料を早く発見したい』という点にあると考えている。そのため、GeNNIP4MDはMDシミュレーションの支援だけではなく、当社が強みを有する『因果発見AI』、組み合わせ最適化問題を高速で解く次世代アーキテクチャ『デジタルアニーラ』、計算化学統合プラットフォームであるSCIGRESSといったコア技術群に、既存の技術を連携させることで、材料開発の全体プロセスを加速させるMIフローを確立していきたい」と明かした。
溝渕氏は「そのMIフローを現在開発中だ。このMIフローは、デジタル上で実験を経ずに物性を検証できる。それだけでなく、広範囲における材料探索やアイデア出し、試作立案、逆設計にも対応する。逆設計では、必要とする物性から候補物質を探索し、有望なものに対して高精度のシミュレーションを行う。これを『マルチAIエージェント』が自律的に実行していくという構想を描いている。これによって飛躍的に材料探索数を増やし、新材料の発見につなげたい。当社のMIフローとプロセスインフォマティクスを組み合わせることで、製品開発までのリードタイムを半分や3分の1に短縮できるとみている」と述べた。
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