ユニークなのが、レンズ周りに配置された操作リング「ジダイヤル」(語源は時代+ダイヤル)である。1930年代から2020年代まで10種類の時代設定が可能で、例えば「1960(8mmフィルム風)」「1970(ブラウン管テレビ風)」「1980(35mmカラーネガ風)」など、異なる時代をイメージしたエフェクトを切り替えることができる。映像だけでなく音質やノイズも変化し、没入感のある撮影を楽しめる。
本体デザインは、同社が1965年に発売した8mmフィルムカメラの名機「フジカシングル-8」をオマージュした縦持ちスタイルを採用した。スマホでの動画視聴が主流となった現代に合わせ、撮影される動画のアスペクト比を縦長(3:4)としたことによるデザイン変更でもある。後藤氏は「instaxシリーズは1998年の発売以降、時代とともにトレンドや最新技術を取り入れ、多様な写真の楽しみ方を提供してきた」と述べ、新製品もまた、こうしたブランドの姿勢を体現したデザインであると強調した。
動画撮影に対応するため、ハードウェア面も変化している。記録メディアは従来のmicroSD/microSDHCに加え、新たにmicroSDXCに対応。最大容量が従来の32GB程度から256GB程度に拡大した。オートフォーカス(AF)機能には、従来のシングルAFに加え、新たに「顔認識AF」を搭載した。自撮りや人物撮影の際にも被写体の顔を素早く捉え、より手軽にピントの合った映像を記録することが可能となった。
動画をアップロードするアプリへの接続は、これまでのBluetoothに加え、Wi-Fiでも接続可能とした。専用アプリでは、撮影した動画を組み合わせて編集したり、映画のようなオープニングやエンディングのテンプレートを追加できる。
基本性能としては、有効約500万画素の1/5型CMOS原色フィルターを採用。レンズは35mmフィルム換算で28mm相当、開放F値2.0の広角レンズで、最短10cmまでの接写も可能だ。
発表会の後半ではCMキャラクターを務める広瀬氏と横浜氏が、instax mini Evo Cinemaを用いて撮影から動画再生までを行う様子を披露した。
順番にカメラを構え、お互いを被写体にしてショート動画の撮影に挑戦。舞台上の小物を使いながら、それぞれのカットを撮った。
再生された動画を見た2人は、レトロな映像だけでなく音質まで変化する演出に感嘆し、横浜氏は「映画のような雰囲気で、タイムスリップしたような感覚になる」と称賛した。広瀬氏も「15秒という長さがちょうどよく、何気ない瞬間を思い出に残せる」と語るなど、アナログとデジタルが融合した新製品の魅力をアピールした。
こうした攻めの新製品投入を支えるのが、富士フイルムホールディングスの盤石な業績だ。直近の2025年度上期における連結売上高は1兆5724億円、営業利益は1585億円に達し、いずれも過去最高を更新した。特にイメージングセグメントにおいては、ミラーレスデジタルカメラやinstaxシリーズの販売が好調に推移したことで、売上高は前年同期比約13%増の2915億円、営業利益は同21%増の804億円を記録している。2026年3月期の全社連結売上高予想も3兆3000億円に上方修正した。
中でも1998年に発売されたinstaxシリーズは、世界100カ国以上で展開されるグローバルブランドへと成長し、2024年度末時点でシリーズ累計販売台数は1億台を突破している。
instaxシリーズの世界的な需要拡大に対応するため、富士フイルムは生産体制の強化に向けた投資も行っている。2025年12月18日には、神奈川事業場足柄サイトに対し、新たに約50億円を投じてチェキフィルムの生産設備を増強することを発表した。新設備は2026年春より順次稼働し、同年秋以降のフル稼働時には、2025年度比で生産能力が約1割向上する見込みだ。2022年以降の累計投資額は約115億円に達しており、これら一連の投資によって、チェキフィルムの生産能力は2022年度比で約5割増となる計画である。
後藤氏は「今後も市場の需要動向を注視しながら、経営としてさらなる投資を検討していく」と意欲を示した。
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