自動化機器やロボットを導入する前に製造部の責任者が最初にしなければならないことは、自社の製造現場全体のモノの流れと各工程の作業の流れを「見える化」することだ。
まずは、日々の業務で当たり前のように取り組んでいる製造現場の作業を可視化することで、現場作業の一連の流れや状況を把握する。そして、現在人手で行われている作業の中で自動化すべき優先度を付ける。
作業工程を「見える化」することで、経営者や製造部など関係者間で現状を共有でき、自動化に向けての意識統一が図られるとともに、目指すべき目標も明確になる。
まずは関係者間で、自分たちがどこに向かおうとしているのかという「行き先」をしっかり見据えておくことが重要である。
「木を見て森を見ず」という言葉がある。製造部の担当者と話をしていると、技術的なこだわりがあるあまり、どうしても細かな狭い世界に入っていきがちである。普段、「仕様書」や「発注書」作りに慣れていることも関係しているのだろう。
しかし、ここで肝心なことは「仕様書」や「発注書」を作ることではない。全体を俯瞰でき、誰もが一目で理解できるようにするための「見える化」作業であり、大きな視点で物事を把握する意識を持つことが重要だ。
忙しい通常業務の中で、この「見える化」シート作成作業は少し大変だが、必ず製造部などの現場責任者が作ることだ。
個別工程の「見える化」(シミュレーション含む)をメーカーが無料提供したり、コンサルが有料で製造現場全体の「見える化」を請け負ったりすることも可能だが、自分たちで作った方がいい。
「見える化」シートで各工程の現状を把握し、優先度を付けたら、導入候補製品の絞り込みを行う。
そして、絞り込んだ製品のメーカーに現場に来てもらい、製品が実稼働する上で問題となる点はないか、追加で必要とされる機材は何か、安全面などをチェックする。導入候補の製品が複数ある場合は、各メーカーには基本的に同じ項目を確認する。それにより、詳細な比較検討ができるので、導入製品を決定する際の判断材料になる。
最終的に1社もしくは2社に絞り込んだら、現場にデモ機を持ってきてもらい、問題なく稼働するか最終確認を行う。デモ機の運搬/期間運用は無料の場合も多いが、運搬費が有料であったり、デモ機自体が用意されていなかったりすることもあるので、事前に確認しておく。
次回(第4回)は、自動化機器/ロボットシステムを導入(立ち上げ)し、運用する際の注意すべき点などについて記述する。
小林賢一
株式会社ロボットメディア 代表取締役
NPO法人ロボティック普及促進センター 理事長
2005年から20年間にわたりインフラ・プラント点検、建築施工、製造工場、介護・高齢者見守り、生活支援などの分野でロボット関連技術の調査、開発支援、実証実験、利活用、セカンドオピニオンに携わり、現在、ロボットビジネスに関するさまざまな相談に応対している。
ロボットビジネスのプレイヤーとして新たな活躍を目指すための講座(日本ロボットビジネス体系講座)や、与えられた「解」ではなく、自ら「解」を導き出し、収益につながるビジネスモデルをコーチングするワークショップ(ロボットビジネス・マインドリセット)を主宰。書籍「ロボットビジネスの全貌シリーズ」の監修、発行も行った。利害関係のない中立で公正な「ロボット・セカンドオピニオンサービス」や、異なる領域・用途にも利用可能な両用技術で既存事業と極限環境双方から収益確保を目指す研究会「ハイブリッドデュアルユース/ダブルインカム」などを実施。
ロボット産業創出推進懇談会 座長(2016〜2021年)
ロボット保険サービス 代表(2012〜2021年)
かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会 事務局長(2011〜2015年)
ロボット実証実験実行委員会 委員長(2011〜2014年)
介護・医療分野ロボット普及推進委員会委員(2010〜2012年)など
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