生成AIによって自律的に判断をする柔軟なロボットの事例として、デンソーの「Generative AI-Robot」を紹介する。
デンソーのGenerative AI-Robotは、人との会話の中でその指示を解釈し、実行タスクをロボットが判断して自律的に動作をするというものだ。人の言葉による抽象的な指示でも動作が実行できる点が、従来のロボットの在り方との大きな違いだ。
例えば、「水、お茶、ペンを取って」や「ベルを組み立てて鳴らして」などの指示をすると、その指示を解釈し、協働ロボットが動作を判断して実行する。事前にある程度のティーチングは必要だが、モノを取る動作だけでなく、組み立て作業も担わせることができる。また「甘い飲み物が欲しい」「書けるものが欲しい」などのさらに曖昧な指示でも生成AIが文脈を読み取り、実行タスクを判断して実行できる。
Generative AI-Robotは、人の指示をテキストに変換する音声認識AIと、その指示から実行タスクを判断する生成AIの大きく2つのAIで構成されている。
まず、曖昧なものも含めた人の指示や会話を音声認識AIがテキスト化する。そのテキスト化された人の指示をもとに「スキル」と呼ばれる事前にプログラムされた小さい単位での動作モジュール(例えば、つかむ、組み立てる、渡す)などを組み合わせて動作を構築する。音声指示の文脈からどのタスクをどの動作モジュールを組み合わせて実施すべきかを生成AIが判断するのだ。生成AIには、事前にどういったスキルができるロボットなのかをプロンプトとして指示をしており、その前提でロボットが動作する。
デンソーでは、生成AIと融合したGenerative AI-Robotが、今までのロボットの利用領域を拡大する大きな原動力になると捉えている。
例えば、製造業では、製品のニーズの変化やライフサイクルによって、試作段階、大量生産段階、少量生産段階と生産プロセスに要求される内容も変化する。この中で、大量生産段階は、今まで通り事前にインテグレーションを行い高速で動作させるロボットの活用を行う製造ラインとなる。一方で、Generative AI-Robotが対象とするのは、試作段階や、少量生産段階となる。これらの段階では状況や生産計画に応じてフレキシブルにオペレーションを変えることが求められる。
従来の協働ロボットは、速度が遅く衝突停止機能がついており柵の必要のない「安全な産業用ロボット」としての使い方が主流であった。先述したように設定の負荷は変わらず必要であったため、本当の意味で人間と作業を協働して取り組むケースはまれだった。Generative AI-Robotはこうした協働ロボットと人の連携の在り方も変えることになる。
特に、食品製造業、建設業など、人との協働が求められて柔軟な対応が求められるモノづくり領域での新たな適用領域の拡大が期待できる。その他、物流、小売、医療、サービス業、さらには農業を含む1次産業や、通信がなくとも自律的に復旧し動作する宇宙ロボット、家庭における人と一緒に調理するロボット、部屋の状況を判断して分担して片付けを行うロボットなど、他分野での広がりが期待できる。生成AIとの融合によって今までロボットが入れられなかった分野にロボットが使われるようになっていく。
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