東京大学は、指輪型無線マウス「picoRing mouse」を開発した。指輪と中継器であるリストバンドの通信に磁界バックスキャタを用いることで、従来のBLE通信と比較して消費電力を約2%に削減した。
東京大学は2025年10月1日、超低電力で動作する、指輪型無線マウス「picoRing mouse」を開発したと発表した。一度のフル充電で1カ月以上動作し、指の動きを精密に検知する。
指輪型入力デバイスのpicoRing mouseは、磁気式トラックボールとマイクロコントローラー、バラクタダイオード、コイルを組み合わせた負荷変調システムだけで実装できる。これにより、最大消費電力449μWの低消費電力なデバイスを製造できる。
同研究では、picoRing mouseとAR(拡張現実)グラスの間に、中継器としてリストバンドを採用した。指輪とリストバンドの通信に磁界バックスキャタを用いることで、従来のBLE(Bluetooth Low Energy)通信と比較して消費電力を約2%に削減している。従来の小型デバイスは電池容量が限られ、5〜10時間で電池切れとなることが多かったが、picoRing mouseは1回の充電で1カ月以上駆動できる。
磁界バックスキャタの開発では、分散コンデンサーを用いた高感度コイルとバランスドブリッジ回路を組み合わせることで、通信距離が約2.1倍に拡張した。低電力ながら信頼性の高い通信が可能で、リストバンドからの送信電力が0.1mW程度でも、外部のノイズに対し優れた通信性能を発揮する。
ARグラスは今後、広く普及することが見込まれる。低電力の指輪型デバイスによってARグラスの操作性が高まり、屋内外で長時間利用可能になるため、公共交通機関などの混雑した場所でも自然にAR画面を扱えるようになる。今回の成果は、次世代のウェアラブル入力インタフェースや無線通信研究の発展につながることが期待される。
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