オムロンは2025年9月30日にSysmac-Edge「データフローコントローラDX1」をグローバルで発売する。同社では5年間で1万台の販売を目指している。
オムロンは2025年9月10日、京都市内とオンラインで記者会見を開き、同月30日にグローバルで発売するSysmac-Edge「データフローコントローラDX1」の概要を説明した。同社では5年間で1万台の販売を目指している。
データフローコントローラDX1は、製造現場で稼働するセンサーやPLC(プログラマブルロジックコントローラー)などの制御機器の稼働データを、専用プログラムやソフトウェアを用いずに収集、分析、可視化できるエッジコントローラーだ。
国内では人口減少に伴う人手不足が各業界で課題になっており、製造現場においては特に、設備保全に関わる人材の確保が困難になっている。オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 コントローラ事業本部長の朴帝映氏は「10年後に社会そしてモノづくりを支える設備をメンテナンスし維持できる人々がいなくなる。つまり、モノづくりが破綻する危機にあるともいえる」と語る。
設備保全担当者は、日々設備を点検し、その結果から故障などを予測してメンテナンスを行う。人手不足が進む中で、それらをIoT(モノのインターネット)化することでサポートし、作業者の経験や勘ではなく、データに基づく予兆保全や傾向管理を行う必要がある。
ただ、既存設備においてIoT化を進めるのは容易ではない。数十年稼働している工場には、既にメーカーが生産を終了している機器や、さまざまなメーカーの機器が混在している。さらに導入に当たっては既存設備への影響を最低限にとどめる必要がある。また、設備から得られるデータも、通信プロトコルなどがばらばらで、データ記録形式や時系列データの収納方法が異なるため、意味のある形でデータを収集することが難しい。その上、データを可視化したり、分析/活用したりするにはITスキルが求められる。
「これらの課題を解決するため、データフローコントローラDX1を開発した。この製品は、翌日からすぐに現場のデータ活用ができる製品になっている」と朴氏は強調する。
データフローコントローラDX1では、"使いやすさ"と"つなぎやすさ"を追求した。
製造現場での活用を想定したデータ加工、分析のためのミドルウェア「SpeeDBee Synapse」を標準搭載し、データ収集に必要な各機器の専用プログラムをインストールすることなく、既存設備にEthernet(イーサネット)ケーブルを差すだけで機器接続が可能となる。SpeeDBee Synapseは、オムロンが2023年に48%出資したソルティスターのミドルウェアだ。
また、データ処理のプロセスが一目で分かるユーザーインタフェースになっており、画面上で収集/分析したい処理ブロック(コンポーネント)を線でつなぐだけで、データの収集/分析/送信などのフローが直感的に作成でき、すぐにデータ活用を開始できる。
設備監視や状態監視、工場監視などの主要な指標データをテンプレートで提供するパッケージを搭載しているため、工場長から現場作業者まで見たい人の目的に合わせた階層構造でデータを表示でき、工場の生産計画目標から設備の稼働状態まで段階的に対象を絞って確認可能だ。PythonやC言語によるカスタマイズもできる。
オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 コントローラ事業部 データビジネス推進グループ長の大坪猶佳氏は「空いているポートにLANケーブルを差し込むだけで、その瞬間からデータが取得できる。ノーコードでデータの統合や分析、出力が可能になっている他、監視する設備の追加も簡単に行える。ソフトウェアを後で入れ替えたり、追加したりすることが可能になっており、ユーザー自身が開発したソフトウェアを使うこともできる」と話す。
オムロン以外のPLCでも、機器やソフトウェアの交換をせずに設備を稼働したままデータ収集を始められる。現時点では、三菱電機「MELSECシリーズ」、ジェイテクト「TOYOPUCシリーズ」、キーエンス「KVシリーズ」、パナソニック「FPシリーズ」、オムロン「NJ/NX/CKCS/CJ/CP/NSJシリーズに対応している。IO-Linkマスターを使用することで、情報機器間の相互接続が容易にでき、各種センサーやカメラのデータを直接取り込むことも可能だ。
1台のデータフローコントローラでつなげられる機器の台数は、扱うデータ量による。マイクロソフトやAWS(アマゾンウェブサービス)のクラウドプラットフォームとの連携も可能になっている。
さまざまな機器からのデータの収集自体難しいが、集めたデータを利活用して実際に現場の改善まで結び付けることも容易ではない。オムロンでは現場データ活用サービス「i-BELT」を展開して、それらの活動をサポートしている。
「このデータフローコントローラーが目指すのは現場のIoT化を誰でも簡単にできるようにすることだ。データフローコントローラで集めたデータを用いて現場を改善するなど、データフローコントローラによってi-BELTのサービスも強化できると考えている。また、オムロンは2025年に米国のコグニザントと提携した。われわわはコグニザントによって、ITとOTをつなげることで企業間、産業間のデータ利活用を目指しているが、そもそも現場から正しいデータが来なければ、そういったデータ利活用もできない。そのため、コグニザントとの連携でもデータフローコントローラの活用を考えている」(朴氏)
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