ハロゲンフリーで酸化ハフニウムの異方性原子層エッチングに成功研究開発の最前線

名古屋大学は、ハロゲンフリーのプラズマプロセスで、酸化ハフニウムの異方性原子層エッチングに成功した。難エッチング材料の酸化ハフニウムを原子レベルで微細に加工、制御可能になる。

» 2025年09月03日 11時00分 公開
[MONOist]

 名古屋大学は2025年8月19日、ハロゲンフリーのプラズマプロセスで、酸化ハフニウム(HfO2)の異方性原子層エッチング(Atomic Layer Etching:ALE)に成功したと発表した。明志科技大学との共同研究によるもので、HfO2を原子レベルで微細に加工し、制御可能になる。

 強誘電性のHfO2は、超微細トランジスターのゲート絶縁膜として広く使用され、次世代の非揮発強誘電体メモリへの応用が期待される材料だ。しかし、HfとOの結合エネルギーが高く、ハロゲン化合物の揮発性が低いため、難エッチング材料とされている。

 今回の研究では、低圧高密度プラズマ生成装置を用いて、窒素プラズマと酸素プラズマを交互に照射することで、室温でHfO2のALEに成功した。具体的には、HfO2膜表面の酸素原子(O)を窒素原子(N)に置換し、窒化ハフニウム(HfN4)の表面層を形成。これを酸素プラズマ照射すると、室温で揮発性の高い反応生成物となり、除去できる。

酸化ハフニウムのALEの概念 酸化ハフニウムのALEの概念[クリックで拡大] 出所:名古屋大学

 また、独自開発のリアルタイム表面構造分析装置を用いて、反応生成物の構造解明と反応モデルの構築を実施。さらに、窒素イオンのエネルギー低く制御したところ、ALE処理前よりも表面の粗さが低下した。

キャプション 酸化ハフニウムのALEプロセス処理の膜厚変化と表面反応モデル。中央のグラフは、エッジプロセス時間(横軸)経過に伴う膜厚(縦軸)の変化[クリックで拡大] 出所:名古屋大学
キャプション 原子間力顕微鏡による表面粗さ。(a)ALE前、(b)ALE後[クリックで拡大] 出所:名古屋大学

 フッ素や塩素などのハロゲンを使用しないハロゲンフリーのプラズマにより、HfO2の実用的な微細加工技術を確立できたことは、次世代半導体デバイスの実用化に向けた重要な布石となる。有害なエッチングガスを使用しないため、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献する。

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