自動配送ロボットには、フロアマップなどマンション全体のデータを含めて、セキュリティドアのキー位置やエレベーターのボタンの位置を学習させている。自動配送ロボットの上部に設置したアームを駆使して、エレベーターやインターフォンのボタンを押したり、セキュリティドアのキーをかざしたりしてマンション内を移動できる。セキュリティシステムやエレベーターシステムと連携する必要のない独立した運用が可能であり、この高い汎用性が評価を受けて今回の実証で採用されることになった。
物流業界はドライバー不足や荷物量の増加、法改正への対応など多くの課題が存在する。加えて、日本の都市部や再開発エリアでは、1000戸を超える大規模マンションが増加し、居住者の荷物の受け取りニーズが多様化している。ヤマト 宅急便部 エリアマネジメント推進課 担当課長の宮原陽平氏は「ヤマトが複数の宅配事業者の荷物を集約し、居住者一人一人の荷物ごとに異なる多様なニーズへ柔軟に対応するモデルを作る」と語る。
宅配事業者の負担を減らすためには、国土交通省が取り組んでいる再配達の削減など、物流拠点から消費者の手元に届くまでの最後の段階「ラストマイル」の効率化に向けた取り組みが必要であり、その一環として今回の自動配送ロボットの実証を行う運びとなった。今回の実証は、このラストマイルをロボット単独で対応するのではなく、ロボットと人が共存する新しい世界の構築を目指しながら、大規模マンション居住者のライフスタイルに合わせた受け取り方法を選択できるという利便性の提供が目的になっている。宮原氏は「居住者の受け取り利便性が高まれば、ヤマトを含む宅配事業者の負担軽減や効率化にもつながると考えている」と期待を込める。
今回の実証はヤマトの荷物のみを対象としているが、今後は別の事業者の荷物を取り込んだ実証を行うことも検討している。ヤマトは今後、首都圏や関西圏の都市部を中心に自動配送ロボットの実証地域を広げていき、2026年度中の実用化を目指す。
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