脱炭素化が求められる中、製鉄や発電に必要な石炭をどう置き換えるかが大きな課題となっている。神戸製鋼所がその解決策として注目するのが、石炭と同等の発熱量を有する「ブラックペレット」だ。神戸製鋼所はマレーシア企業と提携し、その製造/販売に向けた事業化検討を開始した。
神戸製鋼所は2025年8月25日、マレーシアのSamling Strategicと、CO2削減に資する原燃料であるブラックペレットの製造/販売に関して共同で事業化を検討すると発表した。
ブラックペレットは、日本でも一般的なバイオマス燃料である木質ペレット(以下、ホワイトペレット)を特定の条件で炭化することで、石炭と同等の発熱量を有する脱炭素原燃料だ。発電燃料だけでなく製鉄原料としても使用できる可能性がある。
ホワイトペレットに使用する木材は、森林の健全な成長を目的に間伐された木や、製材工程でやむを得ず発生してしまう端材やのこくず、その他の十分に活用されていない木材を使用する。木は成長段階でCO2を吸収しており、カーボンニュートラルな原燃料と位置付けられている。よって、鉄鋼生産プロセスや火力発電所において使用することで、自然環境への影響を最小限化しつつ、石炭の使用を減らし、脱炭素化に貢献する。また、ブラックペレットは炭化した原燃料であることから耐水性があり、屋外保管が可能なため自然発火などの管理や対策が容易であり、リスクが低く安全な原燃料だ。
神戸製鋼所は、ブラックペレットを発電と製鉄工程におけるCO2排出量削減の有力な手段と位置付け、国内外での普及の先導役を果たすべく、2025年5月15日にUBE三菱セメント(以下、MUCC)と共同で事業化の検討を進めることを公表している。
今回、新たにSamling Strategicと、マレーシアのサラワク州でブラックペレットの生産設備を建設するための包括的な事業化調査を実施することに合意した。ブラックペレットは世界的に十分な流通が確立されておらず、安定的な調達には新たなサプライチェーンの構築が必要だ。高いブラックペレット製造技術を有するMUCCに加え、サラワク州に広大かつ持続可能な木質資源を有するSamling Strategicとの新たなパートナーシップにより、ブラックペレットのサプライチェーン構築に向けて大きく前進する。
同調査は2025年12月末までに完了し、その結果次第で、早ければ2026年に最初のブラックペレット生産設備の建設着手を目指す。
神戸製鋼所は今後も有力なバイオマス木質ペレットサプライヤーとの連携を図り、より強固なブラックペレットのサプライチェーン構築を進めていく。
なお、鉄鋼生産プロセスにおける検討の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発委託/助成事業「JPNP21019(GREINS)」で実施している。
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