里薗氏は「これまで、盛り付けや箱詰め、パレタイズなど人手による作業が可能な工程は自動化が進まなかった。『ロボットハンドは異物混入や衛生面はクリアできるのか』など懸念の声も多かったが、食品産業においても人手不足が深刻で、私たちのようなSIerに省人化の相談が絶えない」と状況の変化を明かし、「新型コロナウイルスなど感染症のクラスター発生による工場停止、作業者の故意による異物混入など、さまざまな要因からも省人化意識が加速している」と人を介するリスクも指摘。
自動ハンドリングに変えていくために「食品ごとの特性を理解して、誤差を吸収できるハンド設計、異物混入リスクの少ないハンド素材の選定、着脱/洗浄可能なハンド、部品外れや破損、摩耗が発生しにくい材質などを検討/工夫した開発が必要だ」と留意点を説き、自社開発したチャックハンド、ベルヌーイハンドなどの事例も紹介した。
その後、同セミナーではFOOMA自動化検討プロジェクトチームとして、食品機械メーカーのマスダック 事業統括本部長の川瀬輝雄氏、長沼製作所 代表取締役社長の長沼秀一氏も加えて「ロボットで行う作業と専用機で行う作業の切り分け」「食品ごとに変える“手”の選び方」をテーマにしたクロストークも行われた。
川瀬氏は「顧客からさまざまな自動化の相談を受ける中で、費用対効果を考えるとロボットを使うか、それに合った専用機を作るか判断が難しい場合もある」と悩みを投げかけると、川村氏は「専用機とロボットの中間システムなど自由な発想で開発に臨むべき」とアドバイスした。里薗氏は「単純な動作なのか、立体的かつ変動する作業かなど製品ごとに判断する姿勢が必要だが、製品のことを最もよく知っているのはユーザー。われわれが気付かなかった、ちょっとした工夫で規則的なハンドリングが可能になることもある」と柔軟な発想でのアプローチを提案する場面もあった。
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