ただ一方で、現状はロボットのアームとハンドが別々に開発されているため制御がバラバラなことがネックになっていると指摘。「ハンドとアームの協調制御を前提としたシステムインテグレーションの考え方を持つ必要がある。アームとハンドが協調して動作することによって、作業時間も圧縮できるはずだ」と提言した。
また、「カキフライなど非常にデリケートな食品の場合は、圧力が集中しない持ち方をしなければならない。最近は3Dプリンタを使った液体シリコンのハンドも開発されているが、ソフトハンドと高速運動は相いれないため、ソフトハンドをどれだけ固くできるかも今後の高速化に重要な要素だ」と新たな課題も示した。
3つ目の「ロボットの多機能化」については、川村氏は「さまざまな研究が進む中で、なかなか実用化に結びつかないのは、『販売個数(多機能性)×価格>事業可能最小規模』という不等式を満足させるハンドができないからだ。ハンド自体は作れても、販売個数が限定されてしまうと事業化できない」とコスト面が立ちはだかっていることを課題に挙げた。
その上で、「カメラ画像の認識はAIによってコストをかけずに実現できる方向に向かっている。ハンドも成形以外の新たな製造方法も出てきているので、コストを下げられるかもしれない。従来は1つだったハンドのモーターを2つにすることで今までできなかった動作を可能にする開発も進んでいる」とコストを抑える取り組みを紹介し、さらなる自動化の推進に期待を寄せた。
続いて登壇した立命館大学の平井氏は、研究者の視点から「ハンドリングデバイスの未来」を発表。「ロボットメーカーは基本的にアームを製造販売している。実際に物をつかむハンドはユーザーやSIerが制作しているが、把持する対象物ごとに設計製作しており、食品ごとに特性の変動が大きいので統一的な評価がなかなか難しい。また、食材の管理に手間を要し、フードロスも生じている」と食品用ロボットハンドの評価実験における課題を指摘した。
平井氏は「そこでグループテクノロジーの考え方を用いて、ばら積みできる定型食品、弾性がある柔軟食品、裁断食品、粉状食品など特性ごとにグルーピングし、さらに形状や寸法、潰れやすいなどのハンドリングに影響する因子を計測した上で、大福やサンドイッチ、パスタ麺などの食品実体モデルを作成した。これを用いることで実験における食材の使用を低減できている」と改善が進んでいることを明かした。
また、ケイズベルテックの里薗氏による「食品の自動ハンドリングの留意点」では、就労人口不足による生産継続の危惧から、今まで自動化が進まなかった工程においても機械化が進んでいることが発表された。
ケイズベルテックは1972年にコンベヤー用ワイヤベルトの専門メーカーとして創業し、現在は生産ラインの自動化、IoT(モノのインターネット)化も手掛けている。
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