OKIが高崎に製造ライン分析ラボ開設 周辺半導体工場の外部委託に迅速対応工場ニュース(2/2 ページ)

» 2025年07月07日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]
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高崎ラボで提供するサービスとは?

 高崎ラボでは、サービスとして「クリーンルーム空気分析」と「薬液不純物分析」を提供する。クリーンルーム分析では、サーモフィッシャーサイエンティフィック製の濃縮イオンクロマトグラフィ「Inuvion RFIC(マニュアル濃縮仕様)」を用いて、クリーンルーム内の空気中に含まれる微量ケミカル成分(イオン成分など)の濃度を測る。その結果をレポートでユーザーに提供する。

高崎ラボ。延べ床面積は18m<sup>2</sup> 高崎ラボ。延べ床面積は58.75m2[クリックで拡大]

【訂正】初出時に、上の画像に記載の文章に誤りがございました。お詫びして訂正致します。(2025年7月8日10時30分)

高崎ラボのクリーンルーム内に設置された「Inuvion RFIC(マニュアル濃縮仕様)」 高崎ラボのクリーンルーム内に設置された「Inuvion RFIC(マニュアル濃縮仕様)」[クリックで拡大]

 Inuvion RFICは、水溶液中でイオンとして存在している物質を分離定量でき、水質分析などの環境測定や、工業、医薬品、食品の分野における品質検査で幅広く使われている。同装置は、1回の分析で複数の成分を同時に分析可能で、ppm(100万分の1)〜ppb(10億分の1)レベルのイオン成分の解析に対応し、濃縮機能により高感度解析が行える。

 この装置は、試料の測定対象成分のみを濃縮し、電気伝導度検出器でイオン成分の定性/定量を実施する。同装置の注入部から入れられた試料は、溶離液によってカラムに運ばれる。イオンは種類によって、価数、半径、疎水性といった性質が違うためカラム内を移動する速度が異なる。そのため、カラムを通過する間にイオン成分が分離されていく。

 Inuvion RFICの適用事例としては、大気中のイオン成分分析や工場排水中のフッ化物イオン分析、化学薬品中の不純物イオン分析がある。

 薬液不純物分析では、アジレント・テクノロジー製の誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置「5800-OES」を活用して、半導体製造工程で使用する酸、アルカリ、有機溶剤などの薬品の不純物量を測る。その結果をレポートとして提供する。

ICP発光分光分析装置「5800-OES」 ICP発光分光分析装置「5800-OES」[クリックで拡大]

 5800-OESは、試料溶液を霧化し、プラズマ内で発光/イオンしたものを検出して、元素の定性/定量分析を行える。同装置は多元素を同時に分析できる他、化学干渉やイオン干渉が少なく、高マトリックス試料の分析にも応じる。低濃度〜高濃度までの幅広い濃度も分析できる。元素の大半で検出下限が10ppb以下と高感度だ。

 5800-OESの適用事例としては、クリーンルーム内における雰囲気中不純物の定量分析や製品中の環境負荷物質分析、各種金属中の不純物の定量分析がある。

 OEGでは、両サービスにより半導体工場における製造ラインの定期的なあるいは緊急時の分析に対応し、2025年度に5000万円の売上高を目指す。「半導体向けのサービス全体で2031年度以降に売上高15億円を目指す。内訳は、半導体部品の企画、設計、試作、認定、製造、アフターサポートをカバーした半導体部品向けのサービスが90%で、半導体製造ラインの品質を確保する高崎ラボの化学分析サービスが10%となる見通しだ。半導体部品向けのサービスは以前から提供しており、多様なサービスをラインアップしている」と語った。

OEGが提供している半導体向けのサービス OEGが提供している半導体向けのサービス[クリックで拡大] 出所:OEG

 今後もOEGは、新しい分析装置や前処理機器を導入し、分析体制の増強を進めていく。現状はプラズマでイオン化された元素を質量分析計で分離/検出して定量する誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)の導入を予定している。ICP-MSは、ppt(1兆分の1)〜ppbレベルの微量元素分析に対応しており、ICP発光分光分析装置より高感度だ。そのため、ICP発光分光分析装置では対処できない微量元素の分析に使用する目的で導入する。

高崎ラボの開所式 高崎ラボの開所式。左から、OEG 環境事業部事業部長の棗田次郎氏、大場氏、OKI 西横手工場長の谷中真澄氏[クリックで拡大]

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