NKRCでは新装置の導入効果に関して「剥離ガラスの廃棄物から有価物への転換」「剥離作業による切創などのリスクゼロ」「ガラス扉冷蔵庫の増加対応」を列挙している。
「剥離ガラスの廃棄物から有価物への転換」では、新装置を使用することで、ガラス板のみを分離することが可能となり、ガラスを単一素材として再利用できるようになる。これにより、ガラスを有価物としてリサイクル可能だ。その結果、資源の有効活用が進み、廃棄物の発生を抑えられる。剥離したガラス板はガラスウール原料などに使える。同社では使用済み冷蔵庫のリサイクル率が0.4%向上すると見込んでいる。
「剥離作業による切創などのリスクゼロ」では、前処理には一部手作業が必要だが、新装置は剥離作業が自動化されているため、作業中の切傷などのリスクはない。
「ガラス扉冷蔵庫の増加対応」では、新装置の導入で省人化と自動化を実現し、作業効率を高められる。これにより、使用済みガラス扉付き冷蔵庫の回収が集中するピーク時にも対応できる。星野氏は「手作業によるガラス扉からのガラス板の剥離は8〜14分かかるが、新装置では9分で自動で行える。新装置で剥離作業を実施している間に作業員が別の業務を進められる効果は大きい」と強調する。
今後、パナソニックHDは2026年度中にNKRCのリサイクル工場への新装置導入を目指す。ガラストップ洗濯機、スマートフォンなど家電分野での用途開発に加えて、太陽光パネルや複層ガラスなど、異業種への展開可能性も検討する。後川氏は「太陽光パネルのガラス剥離で新装置の活用を検討している。しかし、現在は封止用の樹脂とガラスが接合した部分をきれいに剥がせないという課題があり、解決に向けて研究開発を進めている」と述べた。
なお当面の間、パナソニックHDはNKRCのリサイクル工場への導入に向けて新装置の改良を推進する考えだが、将来は外販も想定している。
パナソニックHDのMI本部は、レーザー加工技術をリサイクル分野に活用する研究開発活動を2019年に開始した。2022年には、ガラス扉のガラスを透過するレーザー光を用いてガラス裏面の有機塗料を炭化させることで、ガラス板のみを剥離可能にするレーザー剥離工法を開発し、レーザー剥離工法の社会実装に向けた取り組みを進めていた。
NKRCは、廃ガラス扉冷蔵庫量の増加による破砕機へのダメージを避ける目的で人の手によるガラス板の解体を行っていたが、剥離作業による切創等災害リスクの低減と今後予想される廃ガラス扉冷蔵庫の増加に備えて分解工程の自動化の取り組みを検討していた。
ガラス剥離工程の自動化を目指す両者の思いが一致した結果、2023年にレーザー剥離装置の開発に向けた協業を開始した。この協業では、NKRCが検証エリアと剥離用冷蔵庫扉の提供、実際に検証機を使用しての課題抽出と改善提案を実施し、パナソニックHDが課題解決と改善提案に基づく作業性向上と安全対策を反映して装置の設計を行っている。
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